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特集

奮闘する全国各地の地域特産作物(後編)


「栽培については、高知などの一大産地に比べるとまだまだです。ですが、コウゾは強いので、私が使う程度は採れます」
コウゾは平らなところでは育ちにくい。山と平地の中間地にでき、水はたくさん必要だが、水がたまらないところに育つ。ミカンなどの段々畑のようなイメージだ。山浦さんがコウゾを育てている地域は傾斜地になっており、水はけが良く、適した環境だった。
「コウゾは弱い植物ではないのでどこでもできます。どんどん根っこが増えていきます。質を求めなければすぐに作れます」
しかし、良質なものとなると話は違う。草刈り、良質ではない芽の芽摘み、単純な作業だが、すべての工程で機械化ができない。その作業がコウゾの質を左右する。
11月から2月までが和紙の材料を作る時期。木の部分から作るのが木材パルプで、木の靭皮繊維を使うのが和紙だ。12月ぐらいにコウゾを伐採する。冬場は山浦さんが住む地域は、雪が2m以上積もるので、雪が降る前に処理しないと1年間の材料がなくなる。
1月には蒸して皮をはぎ、2月から皮の汚い箇所をきれいに取り、1年間乾かして保管する。2、3月ぐらいから1年間保管していた皮を製紙にしていく。靭皮繊維は長ければ長いほど、酸化が遅いので、繊維の長さによって耐久力が違う。そのため、コウゾを使った和紙は長持ちするのだ。

【こだわりと探究心】

しかし、和紙のためにコウゾを加工するには手間がかかる。今は、和紙を作る際、日本国内にあるコウゾよりも海外のコウゾでできた材料を使う人がほとんどだそうだ。
皮を作っている人の高年齢化、育成に手間がかかるので若い人も入ってこない。和紙といっても、海外産の材料を使った和紙になる。その中で、自分でコウゾから作って和紙に加工し、販売する山浦さんのような人は珍しい。
「単なるこだわりです」
こう謙遜するが、生半可なことではない。
また、北陸は湿度が高く、冬は日があまり差さない。そのため、乾燥が難しい。そうすると皮をはいでも水分が多いときにはカビが生えやすい。昔はコウゾを採ってすぐに紙にしているところが多かった。こんなところにも山浦さんの矜持がうかがえる。

【研究に余念がない】

山浦さんの和紙は、インテリアや建築などに使われている。例えば、金沢駅の新幹線乗り場にある改札ゲートのガラスの中に山浦さんの和紙が使われている。北陸新幹線が開通したときに、デザイナーから声がかかった。
あるいは、ある料亭の天井にかける巨大な一枚の和紙を作って、その後ろに照明を当てて柔らかい光を作った。和紙を使った照明は光具合まで計算してすべての施工を受け持つ。有名な建築番組でも、山浦さんの和紙が何度も使われている。

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