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世界農業遺産を訪ねて

テロワールの参入障壁から高収益 消費者支持が持続的農業を導く 静岡 水わさびの伝統栽培


わさび田は収益が高い。土地を使い尽くすべしという考えが出て当然だ。畦がないのは土地の最有効利用なのだ。他人様の土地に足を踏み入れることが慣習として認められるならば、土地を畦道に使うよりわさびを植えるために使うほうが良いということであろう。つまり、共同体社会であれば、畦がないのは“合理的”なのである。畦がないのは「共同体」の残照であろう。

5 わさび栽培のイノベーション

湯ヶ島地区にある静岡県伊豆農業研究センターを訪問、わさび生産技術科の久松奨科長にお会いした。小さな試験場だが(研究員3人)、目的が明確、役に立つ研究所という印象が残った。
久松氏は、畳石式わさび田は適地が限定されており、増やすことが困難だと強調する。豊富な水が必要なこと、敷き詰める砂や岩が必要だが、砂の採集は規制がある。畳石式は投資コストが大きい。山の奥に位置し、重機が入らないので、災害が発生したとき、復旧も大変らしい。普通作の田畑のように「基盤整備」して新規参入ということはない。面積制限要因がいろいろあるようだ。
また、産地、生産者、品種(真妻かそれ以外か)によって、品質が違い、価格が違う。わさび市場は細分化されているという。

トップブリーダーは生産者
品種開発の方向を聞いた。近年、生産者にとって、わさびは作りにくくなったという。水が枯れやすくなった、温暖化で気温が上昇したなど、環境悪化がある。当然、暑さに強い品種に開発が流れる。もう一つの方向は、栽培期間の短縮である。1年で育つ、生育の早い品種を目指している。味の要素である辛味、香り、甘み、粘り、これらを最低限備えたうえで、対暑性、栽培期間短縮を目指す。
病気抵抗性も追求したいが、できない。病気に負けない親株を見つけてこないといけないからだ。病気の畑から、生き残っている株を見つけ出すなどが必要だ。
遺伝資源は、生産者が持っている。トップブリーダー(育種家)は生産者だという。わさびは日本列島で独自の進化を遂げた固有種であり、各地に自生しているため、生産者は長い歴史の中で、それぞれの栽培地に適した様々な形質や特性を持った、数多くの品種・系統を作り出し、栽培に利用してきた。試験場はトップブリーダーから遺伝資源を「借り」てくる。生産者同士でもやり取りしているようだ。わさびの育種は農家上位である。
県研究センターわさび科は、生産者が育成した品種・系統を含む100種類以上の品種・系統を保有するとともに、育種母本としても活用し、2015年には新品種「伊づま」を育成するなど、品種の開発に貢献している。生産者による品種改良は虫が交配しているようだが、試験場は科学的に授粉している。

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