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山口亮子の中国のアグリテック最新事情

養豚のスマート化 1000万頭規模の計画

中国の養豚が熱い。豚熱の拡大がむしろ火に油を注いだ格好だ。大手1社がわずか1市で、日本の飼養頭数に匹敵する1,000万頭を増産するという、目をむく規模のプロジェクトが進む。構造変動のさなかにある中国の養豚業を、特に大手によるスマート化の面から解説する。

世界最大の加工生産ライン

敷地面積約167ha、6階建ての畜舎が21棟あり、1棟につき10万頭を出荷する。全体で年間210万頭。こんな凄まじいプロジェクトが、中国河南省南陽市で進行中だ。同市を本拠とする養豚大手・牧原食品(ムーユエン・フーズ。以下、牧原)が50億元(約860億円)を投じた。
地元紙・南陽日報によると、この施設は2020年2月に着工し、同年秋に2棟で試験運用を始めた。今年の上半期には全体の運用を始める予定だ。年間20億元(340億円)を超える利益を生むと見積もられている。牧原の19年の出荷頭数は1025万頭だから、順調に行けばこの施設だけで同社の20%を占めることになる。飼料と食肉の加工生産ラインを備え、食肉加工生産ラインは世界最大になるという。
中国の養豚は零細農家が多く、業者の99%が中小だ。いわゆる庭先養豚がまだまだ多く、飼育頭数をみると、牧原を含む上位4社で全体の約7%を占めるに過ぎない(日経産業新聞2020年12月16日「中国養豚大手、豚肉価格高騰で増産投資計8000億円」)。大手はいずれも巨大施設の建設を打ち出していて、シェアは高まる見込みだ。国民食と言っていい豚肉の安定供給を中国政府も重視しており、養豚の大規模化と大手への集約を促してきた。
牧原は19年、世界的に注目を集めた。創業者で大株主の秦英林が、長者番付を一気に上げたからだ。ブルームバーグの億万長者インデックスで、最も高い伸び率を記録し、中国の富豪トップ10にランクインした。理由はほかでもない。アフリカ豚熱のまん延だ。
中国は18年の豚熱流行前に4億
2800万頭の豚がいたが、翌19年に一時、ほぼ3億頭まで減った。豚肉価格が2倍近くに跳ね上がり、牧原の時価総額は5000億元(約8兆5900億円)近くまで急伸した。

5Gが覆うスマート養豚施設

豚肉市場には「猪周期(ピッグサイクル、豚周期)」と呼ばれる長期的な価格変動があり、低迷期にあったのが、18年8月以降の豚熱による生産量の激減で、一気に上向いた。今は近年上振れしたどの時期よりも、豚肉価格が上がっている。利益率も飛躍的に高まったため、既存業者が畜舎を増やし、アリババやファーウェイ、不動産大手といった異業種が参入を表明しているのだ。牧原の210万頭を飼うプロジェクトも、そんな中で計画された。

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