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山口亮子の中国のアグリテック最新事情

養豚のスマート化 1000万頭規模の計画



伝統的な養豚からかえる跳び

豚ホテルが諸刃の剣であることは、容易に想像がつくだろう。建設費が高くつくため、肝心の効率化ができないと、経営は立ち行かなくなる。高密度で大量に飼育するだけに、病気のまん延は何としても防がなければならない。養豚のスマート化後進国だった中国、しかも貴港市は430万という人口こそあれ、
「五線都市」つまり箸にも棒にも掛からないランクの地方都市である。そんな土地の企業に、巨大豚ホテルの建設と運営がなぜできるのか。
その答えは、中国の内外の大学や企業との連携にある。武漢にある華中農業大学や広東省の名門・中山大学などとの連携に加え、カナダやオランダ、イギリス、オーストラリア、アメリカ、フランスなどの専門家を招聘している。建設にあたっては、ドイツや韓国、日本などから最新のシステムを導入したという。
同社の歩みは、後進国の中国がかえる跳びで先進国を追い抜くリープフロッグ現象を体現する。ホームページでは、同社の養豚を四つの発展段階に分ける。2004~08年は伝統的な養豚、09~14年に「科学養豚」つまり科学に基づく養豚、15~17年に「数拠養豚」つまりデータ養豚、18年からは「インターネット養豚」に移ったとする。

養豚プラットフォーム開発

同社は豚ホテルを精密に管理するため、「FPF未来養豚場」という養豚向けプラットフォームを、外部の協力も得て開発した。広西揚翔のインターネット養豚元年である18年は、プラットフォームが実用化した年だ。同年に影子科技(広州市)という開発、運用のための会社を設立している。
プラットフォームは「施設と豚、物、人をインターネット上に運ぶ」(同社)設計で、耳標、給餌器、発情検知器、体重計などをスマート化し、生産者を肉体労働の面でも頭脳労働の面でも解放するという。
耳標に通信機能を持たせたり、発情検知を自動化したりする例は、国内にもある。給餌器は、モニター付きで自動調整できるものを開発して使う。施設の温度や湿度といった環境情報に豚の情報、エサの栄養素などの情報を掛け合わせて、オーダーメイドで必要な栄養を正確に与えるという。画像による豚の個体識別も、技術の開発を進めているようだ。
影子科技によると、2019年の実績で広西揚翔のPSY(年間離乳頭数)は28・7(中国平均は15、日本22・7、米国26・4)、全工程の生存率は92%(日本は生後20日まで生存する率が90・6%)、豚肉500g当たりの生産コストは5・31元(約90円、日本は同様の指標がなく比較できず)。これは欧米と比べても、いい線をいっているらしい。

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