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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

南アフリカ共和国 ヘンプは試験栽培で足踏み続き 医療用・嗜好用は先に合法化へ

南アフリカ共和国はアフリカ大陸の最南端に位置し、日本の約3・2倍の国土を有する。太陽の国と言われるほど年間を通じて晴天の日が多く、全体的に温暖な気候に恵まれている。人口は5778万人(2018年)で、黒人(79%)、白人(9・6%)、カラード(混血、8・9%)、アジア系(2・5%)で構成される。公用語は英語、アフリカーンス語など11言語あり、少数の白人が優遇されるアパルトヘイト政策(人種隔離政策:1948~94年)の影響が残る。
農業は北部を中心に、トウモロコシ、小麦、サトウキビ、果樹、放牧等が発展してきたが、白人経営主による大規模な「商業的農業」が農業生産額の約8割を占め、残りの大半は小規模農家である。

南アフリカの提案が大麻の国際規制の始まり

少なくとも1000年前にアフリカ大陸にやってきた大麻草は、南アフリカにおいても先住民たちが喫煙やお茶、食品、植物薬として利用してきた。1600年代以降、アフリカーンス語では「ダガ(Dagga)」と呼ばれ、バソト族が伝統的に出産を容易にするために使っていたという記録が残されている。
ところが、オランダの植民地支配を経て、ナポレオン戦争終結後にイギリスに譲渡されるなかで、大麻禁止の方向へ傾いていった。1870年にナタール植民地が大麻の取り扱いを、ケープ植民地とオレンジ川植民地が1891年と1903年にそれぞれ大麻栽培を禁止した。そして、1910年に南アフリカ連邦に統合された後、1922年に改正関税および物品税法で大麻は正式に禁止となった。その根拠は、大麻消費が犯罪行為の増加や労働者の惰性につながり、白人入植者の安全保障上のリスクになるというものだった。
宗主国のイギリス政府は一方で、1894年に科学的評価として実施した「インド大麻委員会報告」では、「大麻=悪」という考え方は迷信であり禁止や規制すべきものでないと記述している(本誌2020年3月号参照)。しかし、イギリスの植民地や自治領には全く伝わらず、この報告は政治的な影響力を発揮しなかった。それもそのはず、当時はアフリカの人々を支配下に置き、西洋の宗教や政治制度、言語、文化を「与える」ことが、未開の地に居住する人々を文明化する行為であるとみなされていた。そのため、依存性薬物でも、西欧で普及しているアルコールやタバコは合法で、馴染みのなかった大麻は違法の扱いとなったのである。

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