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土門「辛」聞

精米工「大甘JAS規格案」会員企業も採用せずか



逆効果になるか「水浸割粒%以下」

精米工が、「水浸割粒10%以下」の基準を盛り込んできた思惑なり事情はつかめない。とりわけ「10%以下」という数字は、結構甘い基準値という意見が圧倒的。実際に、大手の外食や中食の現場では数%以下が一般的。さらに水準の高低が問題ではなく、「水浸割粒」という基準が盛り込まれたこと自体が問題と指摘する意見もある。精米業者にとってコストアップにつながることが最大の理由のようだ。
精米工・JAS規格原案には、「10%以下」という数字の根拠は示されていなかった。精米工がデータを集め、試験を重ね、分析した結果の数字ではなさそうだ。研究機関の調査レポートの引用と踏んで、その出典を探してみた。
JAS規格原案の参考になる調査レポートは、水稲の場合、国や都道府県の試験研究機関か、大学農学部しかないと睨んで、手始めに国立研究開発法人農研機構のサイトをくまなく探したら、ほぼこれに間違いなかろうと思えた調査レポートを見つけることができた。農研機構が06年から08年にかけて茨城産コシヒカリを対象に調査した「『コシヒカリ』における水浸裂傷粒の発生条件」と題したレポートである。
(1)「精白米を水に20分程度浸すことで米粒の周囲に裂け口を生じる粒を指す。炊飯すると崩壊粒となりやすく、10%以上の発生は炊飯米の外観、食味に悪影響を及ぼす」
(2)「出穂後20日間の平均気温と日照時間を標準化した両者の差(高温と日照不足の影響を合わせた指標値)は、水浸裂傷粒との間に高い正の相関が認められる」
精米工が、「水浸割粒10%以下」の根拠にしたのは、ほぼこれに違いないと思う。近く国に原案を届ける際、数字の根拠を示すことになるが、外食や中食など精米大手ユーザーをヒヤリングした資料は出てこないと思う。
水浸割粒の発生原因についても、農研機構のレポートは、出穂直後の気候変動と結論づけている。高温障害や日照不足などのことである。その気候変動を例にとれば、毎年のように発生、レポート作成時点とは比べものにならないぐらいに大きく変化している。
年産によって玄米の一等米比率が乱高下する不安定さもある。より高温になったり、日照不足に陥ったりしていることだ。極端な例だが、一等米比率が20%台だった19年産新潟コシヒカリだ。
精米の品質は玄米の品質に大きく左右される。「10%以下」という基準を適用したら、従前通りの玄米検査という前提では、相当部分がJAS規格対象外となる可能性がある。

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