ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

中国が日本のコメを変える

2013年以降、中国は世界最大のコメ輸入国となった。その後も増加傾向が続いている。 現在の輸入量は500万t近い。そのうち日本からの輸出は約1000t、まだゼロに等しい。 つまり大幅拡大の可能性が開かれていることになる。それだけ中国の影響は大きいということだ。 変貌を遂げている中国コメ事情を踏まえながら、日本側の対応も考えたい。

Part1 巨大市場にどこまで食い込めるか 中国向け日本米輸出とコメ先物市場/熊野 孝文(米穀新聞記者)

巨大なコメ市場となった中国。将来的には日本から年200万t輸出を視野に入れている向きもある。そうなれば、生産調整をはじめとする日本のコメ政策は根本からひっくり返るだろう。もちろん、まだまだハードルは高い。そうした現状を踏まえながら、いずれ中国とも連動するはずの日本のコメ取引について考える。 (編集部)

【“穀物レベル”とは言えない日本米輸出の現状】

以前、北京常設展示館事業というのがあったことをご記憶の方もいると思われるが、駐日大使館職員のスパイ事件で頓挫した一大事業である。この事業は農水省の後押しで一般社団法人農林水産物中国輸出促進協議会という組織が作られたこともあって、中国向けに日本米を輸出したいというコメ卸等も出資した。
当時(平成23年)もあまり知られていなかったが、コメの輸出でユニークな計画がなされていた。それは日本米を燻蒸しなくても良い方法で北京の展示館向けに輸出しようという計画。どういう計画だったのか? 当時この計画を推進していた人物にその方法を聞いたことがあった。
その人物は議員会館の一室で一本の動画を見せてくれた。その動画には金属で出来た筒の中を回転しながらコメが流れて行く様子が映し出されていた。筒には熱源が装着され、その熱で「カツオブシムシ」を死滅させるという装置であった。
それから10年経たが、依然カツオブシムシ防除の規制がかかったままで、日本からコメを中国向けに輸出する際は「燻蒸」が義務付けられている。中国側の規制はこれだけではない。原発事故に伴う食品輸入規制では、現在でも9都県(福島、栃木、群馬、茨城、千葉、東京、宮城、埼玉、長野)で生産された全ての食品について輸入を禁止しており、精米も9都県産のものは輸入禁止の対象になっている。
こうした高いハードルがあるにもかかわらず、日本側は中国に熱い視線を送っている。なぜなら中国が圧倒的と言えるほどの市場を有しているからである。中国向けに日本米を輸出している商社の中には、価格を含め様々なハードルがクリアー出来れば「200万tの輸出が可能で、生産調整する必要がなくなる」という担当者もいるほど。それが本当なら日本のコメ政策は根底からひっくり返る。
では、現状はどうなっているのか? 国は日本産農産物食品輸出拡大を政策目標に掲げ、その中でコメ・コメ加工食品は重点品目になっているため農水省のホームページにコメ・コメ加工食品の輸出状況等が詳しく紹介されている。まずはそれを紹介するとともに、中国向けに日本産米輸出に取り組んでいる商社や卸がどのような手段で輸出拡大を進めているのかについても取り上げてみたい。

関連記事

powered by weblio