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それから20年を経て、コメ先物が復活したのは、機が熟したということらしい。大連商品取引所が発行する「ジャポニカ米先物取引指南」は、復活の理由として四つを挙げる。(1)コメの規格と検査の整備、(2)受渡量が十分確保できる、(3)十分な競争がある、(4)市場化が進み価格の波が大きいとはいえ落ち着いている。そのうえで、こう指摘する。
「ジャポニカ米の先物の上場復活は、国内の農産物の先物取り扱い品目を完備させ、産業のリスクヘッジの体系を打ち立て、現物取引の分野の安定した発展に役立つ。また一方で『保険+先物』の産業サービスプロジェクトの展開に協力し、コメの買い付け制度を市場化する改革に役立ち、農民の安定した増収を促し、国家の食料の安全を確保する」
コメ買い付け制度というのは、価格支持政策のことだ。コメが供給過剰に陥ると、政府が決めた最低買い付け価格で買い取る。日本のかつての食管制度のようなもので、中国政府は財政負担の増加から、制度を見直し、市場に価格決定を委ねたいようだ。「保険+先物」という聞き慣れない言葉については、後ほど説明する。ともあれ、環境の変化により、コメ先物の復活が投資家だけでなく政府の側からも望まれるようになった。
【大連上場の持つ意味】
コメ先物はまず2014年、河南省の鄭州商品取引所で上場する。ここは中国を代表する先物取引所の一つだ。投資家にとっては、待ち望んだ主食の先物復活のはずだった。が、取引は低調だった。
というのも、中国でジャポニカ米の生産の中心と言えば、筆頭が東北三省(黒竜江、吉林、遼寧)、次いで江蘇省だ。東北三省の生産量は、19年産で全国の56.6%にもなり、江蘇省は25.6%である(「ジャポニカ米先物取引指南」より)。江蘇省のコメが上海や浙江省をはじめとする近隣地域に主に流通するのに対し、東北米は全土に広く流通する。
一方の河南省は、ジャポニカ米の大産地から遠い。河南省を含む華北黄淮地域の生産量はわずかに3.5%だ。そのため、上場のインパクトは弱かった。そんな状況をガラッと変えたのが、19年8月の大連商品取引所での上場だった。
遼寧省南部に位置する大連は、ジャポニカ米の一大産地である東北の交易の要だ。消費量を見ても、東北三省と内モンゴルで中国全土の22.8%を占め、決して少なくない。
当時はくしくも、大阪堂島のコメ先物が、JAグループや自民党内の反対もあって、4度目の試験上場延長を余儀なくされたタイミングだった。それだけに、日本でも大連の上場に注目が集まった。
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