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特集

中国が日本のコメを変える


なお、日中のコメ先物に期待される役割は、一致している。大連商品取引所の上場にあたっては、先物取引が生産者と実需の双方に資するリスクヘッジ機能を持ち、経営の安定化につながると強調された。「国家の食料安全保障にかかわる戦略作物であるコメ産業の安定化に欠かせない」と。
日中で違うところがあるとすれば、大連の先物は零細農家の「扶貧」つまり貧困削減の意味合いも大きいことだろう。このことは後述する。

【コロナで急拡大】

大連のコメ先物は、出だしの8月こそ220万tという取引量があった。ところが、ご祝儀がてらの取引に過ぎなかったのか、取引量はすぐに低迷する。鄭州の二の舞になるのだろうかと考えていたら、思わぬことから取引量が爆発的に増えた。20年2月に前月比600%超、140万tという取引量に突如跳ね上がったのだ。理由はほかでもない、新型コロナの流行だ。
コロナ禍により一部の国がコメ輸出の規制に動くという情報が流れ、買い注文が増えたようだ。同年3月の取引量は約130万t、4月は220万tとなる。19年8月の、上場を記念した瞬間最大風速と思われた水準に戻ったのだ。
コロナ禍で、リスクヘッジに先物が使えるということ、そして投機対象としてのコメ先物の魅力が認識されたのだろう。
20年4月の成約額は、77億元だった。これは当時のレートで約1160億円になる。それから1年以上が経ってどうなったかというと、21年5月の取引量は330万t、成約額120億元(2040億円)だ。

【大連の商品設計】

大連のコメ先物の商品設計を見てみよう。次ページの表は「ジャポニカ米先物取引指南」を翻訳した。
取引単位は「手」で、1手は10tだ。品質基準は、砕米が7.5%以下、不完全粒が1%未満、水分率が4~10月は14.5%未満、11~3月は15.5%未満、コンタミネーションは5%未満など、細かく決められている。
値幅の制限は、商品価格の暴騰や暴落を防ぐものだ。制限の上限に達する「ストップ高」、下限に達する
「ストップ安」など、言葉は聞いたことがあるかと思う。ちなみに、取引参加者ごとに取引量の上限があり、独占的な取引を防いでいる。
興味深いのは、受渡地点だ。今は東北三省のみながら「将来は江蘇省を受渡地点に入れる」としている。大連商品取引所の「ジャポニカ米先物契約と規則の説明」は下記のように解説する。
「東北と江蘇省のジャポニカ米は、一つの価格体系になく、品質にも一定の差があるため、江蘇省はひとまず受渡地点としない。上場の初期は、東北地方の黒竜江、吉林、遼寧の三省を受渡地点とする」

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