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特集

中国が日本のコメを変える


習近平政権が最も重視していると言っていい政策が「扶貧」「脱貧」(貧困削減の意)だ。「保険+先物」はこれに通じる。そのため、16年から大連、鄭州、上海という三大取引所へ次々と広がっていった。大連のコメ先物も、まさにこの「保険+先物」の一環として産声を上げた。

【重要文書で6年連続言及】

「保険+先物」の重視を、中国共産党中央は毎年年初に表明している。年初に出す最初の文書は「1号文件(文書)」と呼ばれ、その年の特に重要な政策決定を示す。この1号文件のテーマを、2004年以来、農業が独占していて、16~21年の6年にわたって「保険+先物」に言及しているのだ。
農業がテーマになるのは、中国で最も食えない存在と言っていい農民にどう対処するかが、焦眉の課題だからだ。国家という強力な後ろ盾を持つ大連のコメ先物は、今後拡大こそすれ、低迷は考えにくいのではないか。
農民を先物市場に引き込むために、保険業者と連携したのは興味深い。これは日本でも参考になりそうだ。大阪堂島の取引が低調な理由に、参加する農家の少なさがある。JAグループが乗り気でないことも障壁には違いない。が、JAの協力を得られたとしても、先物のしくみを学んで参加しようと思う意識の高い農家は、どれほどいるだろうか。
日本だと、説明会で懇切丁寧に解説すれば、先物を理解できる農家もそれなりにいる。それに対して中国、しかも貧困地域の農民となると、教育水準からして先物を理解させるのは至難の業だ。それだけに、保険と組み合わせるという発想の転換に至ったのだろう。農民の手取りを上げるという至上命題を達成するためなら、どんな手段も取れるのが、中国らしい。

【農水はジャポニカ米と知らず】

ここまで、大連のコメ先物取引を解説してきた。日本の先物取引に参考になるところがあれば、これ以上の幸いはない。最後に愚痴を言うと、原稿を書くのに相当手を焼いた。というのも、日本で中国の先物を分析しているところが、ほとんどないようなのだ。
農水省は、大連商品取引所のホームページの英語版を確認しているが、それ以上の分析はしていないという。加えて、大連で上場したのがジャポニカ米だということすら、把握していない。
というのも、英語ページでコメ先物の品目名が「Polished Round-grained Rice(搗精された丸いコメ)」となっているからだ。そのため、省内では「搗精されたうるち米」つまり、もち米ではないが、ジャポニカ米かどうかよく分からないということで通っているようだ。中国語のページで明白にジャポニカ米と書いているのに、である。その辺の中国人を捕まえて聞くだけですぐ分かるにもかかわらず、上場から2年経っても何米か分かっていないというのは、国の調査力としてどうなのだろうか。

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