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【スマート・テロワールの実践者たち】
「スマート・テロワール形成講座」成果報告会
- 藻谷浩介
- 第6回 2021年07月26日
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この取り組みについては、発足当初から最近まで十数回にわたり本誌上でも報告されているが、以下では、地域振興評論家としての筆者の視点から注目される点を、改めて抽出してご報告したい。
なお執筆にあたっては、報告会での発表をなぞって正確を期したが、事実誤認等があれば予めお詫びしたい。
スマート・テロワールの四要素は、耕畜連携、農工連携、商工連携、地産地消だ。寄付講座ではその全てに、大学研究者が地域の農家、加工業者、商業者と連携して取り組んだ。さらには、経営学の見地から、コスト面からのフィージビリティー、消費者意識からみた市場性などへの分析も行なわれた。
このような内容の総合性は、村山秀樹学部長も冒頭に述べておられたが、東北地方で2番目の規模の総合大学である、山形大学ならではといえるだろう。
また、山岳地帯に囲まれ経済圏としての独立性の高い庄内地方にあって、食文化を市の戦略に掲げる鶴岡市に立地する、同大農学部ならではの地域連携力が、存分に発揮された取り組みともなっている。大学の門を開くばかりか自ら外に出て、地域に深く入り込んで連携活動を推進された研究者の皆様に、筆者も敬意を表したい。
四要素の筆頭であり、全体を回すエンジンともなるのが耕畜連携だ。山形大学農学部では、豚の肥育を核に据え、飼料用作物を含めた畑作物を、どのように輪作するのが合理的か、大学の農場を使って研究を進めた。
以下は、中坪あゆみ助教の報告から、筆者が聞き取った概要を、筆者の観点から要約したものである。
輪作の実証実験は、大学附属の農場内の畑地に、40aの実証展示圃を設けて実施された。
畑作物の候補として、寄付者の(故)松尾雅彦氏が選択したのが、子実トウモロコシのほか、大豆、小麦、馬鈴薯である。後3者はいずれも加工食品の原料にもなり、保存が利き、かつ現状の自給率が低いという共通点を持つ。
それを出発点に、庄内の気候風土に適した作物は何か、どの作物をどう組み合わせると土壌肥沃度指数が向上するのか、試行錯誤を重ねつつ5年間取り組んだ。農家の収益性も大事だし、また地元にどのような需要先があり、それに向けた加工業者が存在するのかも重要なファクターである。その結果として出来上がって来た方式は、子実トウモロコシ、大豆もしくは枝豆、秋小麦に加えて春小麦、そして根菜(赤かぶ、大根、人参)という循環だった。
なお執筆にあたっては、報告会での発表をなぞって正確を期したが、事実誤認等があれば予めお詫びしたい。
地域に根差した総合大学ならではの取り組み
スマート・テロワールの四要素は、耕畜連携、農工連携、商工連携、地産地消だ。寄付講座ではその全てに、大学研究者が地域の農家、加工業者、商業者と連携して取り組んだ。さらには、経営学の見地から、コスト面からのフィージビリティー、消費者意識からみた市場性などへの分析も行なわれた。
このような内容の総合性は、村山秀樹学部長も冒頭に述べておられたが、東北地方で2番目の規模の総合大学である、山形大学ならではといえるだろう。
また、山岳地帯に囲まれ経済圏としての独立性の高い庄内地方にあって、食文化を市の戦略に掲げる鶴岡市に立地する、同大農学部ならではの地域連携力が、存分に発揮された取り組みともなっている。大学の門を開くばかりか自ら外に出て、地域に深く入り込んで連携活動を推進された研究者の皆様に、筆者も敬意を表したい。
庄内のテロワールに合った輪作体系の確立
四要素の筆頭であり、全体を回すエンジンともなるのが耕畜連携だ。山形大学農学部では、豚の肥育を核に据え、飼料用作物を含めた畑作物を、どのように輪作するのが合理的か、大学の農場を使って研究を進めた。
以下は、中坪あゆみ助教の報告から、筆者が聞き取った概要を、筆者の観点から要約したものである。
輪作の実証実験は、大学附属の農場内の畑地に、40aの実証展示圃を設けて実施された。
畑作物の候補として、寄付者の(故)松尾雅彦氏が選択したのが、子実トウモロコシのほか、大豆、小麦、馬鈴薯である。後3者はいずれも加工食品の原料にもなり、保存が利き、かつ現状の自給率が低いという共通点を持つ。
それを出発点に、庄内の気候風土に適した作物は何か、どの作物をどう組み合わせると土壌肥沃度指数が向上するのか、試行錯誤を重ねつつ5年間取り組んだ。農家の収益性も大事だし、また地元にどのような需要先があり、それに向けた加工業者が存在するのかも重要なファクターである。その結果として出来上がって来た方式は、子実トウモロコシ、大豆もしくは枝豆、秋小麦に加えて春小麦、そして根菜(赤かぶ、大根、人参)という循環だった。
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藻谷浩介 モタニコウスケ
山口県生まれの56歳。(株)日本総合研究所主席研究員、一般社団法人スマート・テロワール協会理事。平成合併前の全3,200市町村、海外114ヶ国を自費で訪問し、地域特性を多面的に把握。2000年頃から精力的に、地域振興や人口成熟問題に関する研究・著作・講演を行っている。著書に『デフレの正体』、『里山資本主義』 (共にKADOKAWA)、『世界まちかど地政学Next』(文藝春秋)など。近著(共著)に 『進化する里山資本主義』 (Japan Times)、『東京脱出論』 (ブックマン社)。日本農業新聞のコラム「論点」に、2014年以来、年2回寄稿中。
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