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以下は、桒原良樹准教授の報告から、筆者が聞き取った概要を、筆者の観点から要約したものである。
消費者の嗜好の分析では、ざっくり言えば以下のような消費者意識が浮き彫りになった。
(1) 消費者の8割程度が、「国内産」の食品を意識して購入している。
(2) しかし加工食品の場合、「国内産」とは国内メーカーの製品ということであり、原材料産地は意識されていない。
(3) 「地域産」を意識して購入しているのは、消費者の2割程度である。
(4) 「地域産」にこだわらない消費者は7割弱存在しており、彼らが地域外産を購入する動機は価格の安さである。
また地産地消の経済効果の定量計測では、以下の3点が結果として報告された。
A 生産農家の総合的な収益性を稲作の場合と比較すると、大豆は3倍近く、小麦は1.5倍、子実トウモロコシは1.2倍の高さとなった。唯一馬鈴薯だけは、収益性が3割ほど下がる結果となっている。
B 子実トウモロコシの価格をkg13~20円の間にすれば、生産農家、飼料配合メーカー、共に採算が取れる。
C 飼料や加工食品原料の庄内での調達率を20~30%まで向上させると、豚肉、大豆、小麦、いずれでも、農家・加工業者双方の、収益率が向上する。
以上の報告内容に対する筆者の感想を述べれば、A~Cに関しては、スマート・テロワールが経営的に無理なく成り立つことを実証した点で、たいへんに心強い研究成果といえるだろう。(1)~(4)に関しては、少々残念だが、「やはりそうか」という数字である。
庄内は、農業生産地として、またおいしい飲食店が集積している場所としても、高いブランド力を持つ。他所で調査すれば、(3)の意識はもっと低いだろう。東京や大阪であればほぼ皆無ではないか。
このような研究結果を踏まえて、地産地消の志を持つ全国の皆さまが目指すべきは、消費者への食育というものをあらゆる場面で意識して、地元産食材消費の意識を高めていくことである。育ち盛りの子どもに高い食材を少量食べさせる必要はないが、少しはゆとりのある大人であれば、地域食材にもっとお金を使い地域内経済循環を拡大することで地域を支える、という意識をもっと持ってもいい。学校での食育と、社会的気運の醸成と、双方が重要だ。
水田の畑地化には課題長期的グランドデザインを
今回の報告内容ではないが、耕畜連携の中の重要なテーマなので、ここで水田の畑地化について触れておきたい。
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藻谷浩介 モタニコウスケ
山口県生まれの56歳。(株)日本総合研究所主席研究員、一般社団法人スマート・テロワール協会理事。平成合併前の全3,200市町村、海外114ヶ国を自費で訪問し、地域特性を多面的に把握。2000年頃から精力的に、地域振興や人口成熟問題に関する研究・著作・講演を行っている。著書に『デフレの正体』、『里山資本主義』 (共にKADOKAWA)、『世界まちかど地政学Next』(文藝春秋)など。近著(共著)に 『進化する里山資本主義』 (Japan Times)、『東京脱出論』 (ブックマン社)。日本農業新聞のコラム「論点」に、2014年以来、年2回寄稿中。
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