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スマート・テロワールの実践者たち

「スマート・テロワール形成講座」成果報告会


山形大学農学部の位置する庄内平野は、太古の潟湖が陸地化した場所で、日本有数の水田単作地帯であり、土壌からの効果的な排水方法の確立が求められる。
2019年から地元農家と連携した取り組みが始まっていると聞くが、農業土木の世界であり、建機や資材を提供できる建設業者ほかとの連携がカギとなりそうだ。加工分野における東北ハムのような、新たな協力企業が出てくれば状況は大きく進展すると思うが、いかがなものだろうか。
また庄内には、太古に湖底だった低地部分以外に、山裾の傾斜地の水田や、潟湖と海の間に形成されていた砂丘(微高地となっている)を水田にした部分もある。大局的には、排水しやすい後2者を先に畑地化し、稲作は低地に集約していくのが理想であり、個人地権者を調整して長期的にそのようなグランドデザインを実現していく視点が必要だ。大学だけの手には余る事業だが、ぜひ推進母体の一つとして活動を続けていただけるとありがたい。

寄付講座終了後も続く山形大学農学部の挑戦

松尾雅彦氏の寄付による講座は5年間で期間満了となった。しかし山形大学農学部では今年から、「庄内スマート・テロワール構築プロジェクト第2ステージ」に着手している。
以下は浦川修司教授の総括報告からの聞き書きであるが、21~23年度に関しては、「地域産飼料資源のサプライチェーンの構築」を掲げて、JRAの畜産振興事業の補助金を獲得した。農機購入などについて不足する部分については、SDGs関連の補助金獲得を目指すとともに、クラウドファンディングも行なう予定である。
また21年5月には、新たに「庄内スマート・テロワール構築協議会」が設立された。農学部長を会長、鶴岡市長と東北ハム社長を副会長、地域スーパーの経営者を監事にした団体であり、その下に農家や加工メーカーを含む畜肉チーム、小麦チーム、大豆チームが設けられている。開発商品の広報やブランド管理も行なうという。
以上のような実績と今後の計画をどう見るか、最後に筆者個人のコメントを書くこととしよう。
スマート・テロワールは、地域自給圏の確立という壮大な目標を掲げた取り組みである。その壮大さを前にすれば、報告された内容には、掘り下げや展開の足りないと感じられる部分があったかもしれない。
だが大学の保有する資金や物的資源は限られている。そして、個々の研究者の目指す研究業績と、連携先である地域の様々な主体の動機は、常に同じ方向を向いているわけではない。

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