記事閲覧
折しもトウモロコシの国際取引価格は7年振りに高値を付けている。ほぼ輸入に頼っているトウモロコシの代替ではなく、国産かつNON-GMOのトウモロコシという価値を共有する需要家との出会いが後押しになっている。
7月初旬時点で、トウモロコシの生育は順調だ。5枚の湿田を合筆した圃場にトウモロコシが植わっている景色は圧巻である。梅雨のまとまった降雨も額縁状に明渠を掘り、表面排水する圃場づくりで乗り切った。8月後半に収穫予定でコンバインを手配している。
投下熱量の合う人とともに
コロナ禍は社会全般に価値観の転換を強いたが、小泉の脳ミソにも変革をもたらした。数年前から主食用米から加工用の餅品種に力を入れていたが、コメ業界は在庫余りと米価下落に直面した。
その一方で、会議や研修の機会が減り、家族と過ごす時間が増えたことで、生活者の視点がこれまで以上に芽生えたようだ。外出自粛中も、生協の宅配は国産の安全・安心を謳う食材を届けてくれたことへの感謝を口にする。しかし、生産者としてコメで差別化を図り、物語を紡ぐのは容易ではないこともわかっている。コメは生産量も関係者も多すぎて、普遍的になりすぎている。それなら、トウモロコシをつくることで、飼料供給という畜産業の物語の起点に関われないだろうか。この地で収穫したものを、近隣のエリアに供給して、堆肥を還元するという循環を全うしたいという欲求が湧き上がってきたという。
早速、行動に移した。トウモロコシの供給先である(農)新利根協働農学塾農場に堆肥の供給を依頼したのだ。成田近郊には畜産農家がないため、長らく畜産堆肥を確保できず、鶏糞を購入したり、緑肥を作付けしたり、代替手段を講じてきた。だが、吸肥性の高いトウモロコシほど堆肥と相性の良い作物はない。こうして、21年産のトウモロコシから物質循環という新たな物語を紡ぎ始めている。
米麦などの土地利用型農業では、一般的に10a当たり10万円以上の収入が収益性の判断基準になる。トウモロコシ栽培に挑戦し始めた頃から投下労働時間当たりの収益という発想に理解をしめしてきたが、コロナ禍を経て、その呪縛から解放されたという。
「やれるかどうかは、投下労働時間と自分に対するコストが見合うかどうか。合わなければ、拡大しても意味がないからね。だけど、トウモロコシは時代のニーズにマッチするのではないだろうか。少なくとも、投下熱量の合う人とならやっていけると思う」
会員の方はここからログイン
小泉輝夫
農業経営者ルポ
ランキング
WHAT'S NEW
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2020/12/17)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2020/08/07)
