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特集

AGRI FACT(前編)


前回述べたように、農薬取締法では、残留農薬が人や環境に影響を与えないように使用基準が定められています。その使用法を守れば、収穫した作物が残留基準を超えることはありません。また、農薬を使わずに栽培したからといって、作物に農薬が残留していないとは限りません。近くの畑で使った化学合成農薬が飛んできたり、流れ込んできたりする可能性があるからです。このような農薬飛散をドリフトといいます。
そればかりではありません。農薬といっても、さまざまな種類の化学物質があり、その中には、家畜に使われる抗菌剤(抗生物質)、家庭で使う殺虫剤、ペットに使うダニ除けなどにも農薬と同じ、あるいは類似成分が含まれています。家庭用の殺虫剤などは農薬には分類されませんが、それらの農薬・農薬類似成分が食品や環境中に残留している可能性があります。

【流通段階は食品衛生法で規制】

農薬取締法により生産段階でどれだけ農薬の使用法を規制しても、農薬の成分が残留している可能性があり、その作物や食品が完全に安全とはいいきれません。そのリスクを排して安全性を担保するために、流通時の作物や食品については、食品衛生法によって農薬の残留基準が決められています。また、環境基本法によって環境中の残留農薬基準についても定められています。
食品衛生法第11条では、国内産、輸入品を問わず、農作物や食品への農薬(飼料添加物や動物用の医薬品も含む)の残留基準が定められており、その基準を超えていたら輸入や加工、使用、調理、保存が禁止されています。これがポジティブリスト制度です。残留基準とは、食品に残留する農薬などの限度の値を定め、これを超える食品は市場に流通しないように規制するためのものなのです。
残留農薬を管理するために、国内で流通する農作物については地方自治体の食品衛生監視員が抜き取り検査をしています。さらに、輸入農作物や食品については、港や空港にある検疫所で検査をしています。基準値を超えたものがみつかれば、廃棄されたり、回収されたりします。

【ポジティブリスト制度で未登録農薬も規制】

日本は多くの食品を輸入しています。発展途上国の中には、経済性や有効性の点から、すでに先進国では使用を禁止されている農薬を使用している場合があれば、各国の地域特性から害虫や雑草などの種類が日本と異なるため、日本の規制にない農薬が使われている場合もあります。
2002年に、ホウレンソウなど輸入農産物に基準値を超える農薬や日本で認められていない農薬が検出されるなど残留農薬が問題になりました。この問題により、農薬取締法が改正され、農薬の使用基準が遵守から義務へと強化されました。さらに食品衛生法が改正され、2006年にポジティブリスト制度が導入されました。

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