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特集

AGRI FACT(前編)



除草剤ラウンドアップと、その主成分グリホサートがもたらす健康被害は、発がん性だけでなく、さまざまな分野で明らかになっている。発達障害など子供たちへの影響、妊娠や出産への影響、さらには世代を超えて受け継がれる悪影響などがある。いま世界では禁止を含む規制の流れが強まっている。
出典:藤田和芳氏(オイシックス・ラ・大地(株)代表取締役会長)のTwitter投稿(2021年4月13日午後4時23分)

【ファクトチェックの検証結果】

藤田和芳氏は食材宅配大手オイシックス・ラ・大地株式会社の代表取締役会長である。当然、食を扱う企業のトップとして、食と農に関する言動には大いなる責任が伴う。
藤田氏が、除草剤ラウンドアップと、その主成分グリホサートがもたらす健康被害の事例として挙げている発達障害の一種であるASD(自閉症スペクトラム障害)は、まだ原因、つまり発症のメカニズムが特定されていない。グリホサートとの関連性については、千葉大学社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授のグループが2020年5月に、米国科学アカデミー紀要の電子版に研究(実験)結果を発表した論文において、「グリホサートがASDの原因である可能性がある」という仮説を提示したにすぎず、科学的に証明されたものではない。論文内に、「本結果からヒトでの妊婦のグリホサートの摂取が、子どもにASD(自閉スペクトラム症)を引き起こすという結論は導き出せません」と明記され、橋本教授もインタビューなどで「関連を調べるには、今後、妊婦を対象とした大規模な追跡調査が必要」と言明している。
千葉大学の論文は、グリホサート入り飲料水を飲ませた妊娠マウスから生まれた子マウスの糞を調べると、そうではない子マウスと比べて、腸内細菌叢のバランスが乱れていたことから、腸内細菌叢のバランスの乱れが、ASDに関連していることを示唆している。しかし、その因果関係は明らかにされていないため、単なる相関関係といえる。因果関係が原因から結果が起る仕組みや過程のことなのに対して、相関関係は統計的な数値の類似にすぎず、科学的な見地では推論でしかない。
藤田氏は2020年10月11日のTwitter投稿で「妊婦マウスにグリホサートを投与すると、生まれてくる子マウスに自閉症の症状が起きた。」と投稿しているが、これは「グリホサートが自閉症を引き起こすかのような」誤解を与える不正確な内容のつぶやきである。千葉大学の論文で示されたのは、「妊娠中のマウスにグリホサートを投与した結果、その子どもに“ASDに似た行動”があらわれた」が正確で、人間のASDと同じものではない。

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