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特集

AGRI FACT(前編)



【貿易自由化への対策として振興】

親環境農業という名称が使われるようになったのは1990年代後半からだ。それまでは韓国でも有機農業といわれてきた。1970年代には韓国各地で有機農業がおこなわれていた。農薬を使いたくないという農家の草の根的な取り組みもあるが、軍事政権下で、農家組織やキリスト教の教会などが民主化運動の一環として、有機農業を営むという動きもあった。1993年まで軍事政権が続いた韓国では、有機農業が反政府運動であるとみなされる場面もあったと聞く。
こうした流れが一気に変わったのは、WTO体制化で農産物自由化の波が押し寄せてからだ。農業を担う政府機関である農林部(現農林水産食品部)は、安い輸入農産物に国内の農業が対抗するには、安全性を高める(*編集部註 有機やオーガニック農産物が慣行農業の農産物と比べて安全性に優れているという科学的な根拠はない)しかないという方針を打ち出し、90年代後半から、親環境農業を掲げて、関連する施策を相次いで発表した※2。
1998年~2000年まで農林部長官を務めた金成勲(キム・ソンフン)氏は政治家ではなく、大学教授を長年務めた民間からの登用だ。民間人出身者が政府機関のトップになるとは日本では考えにくいことだが、韓国では時折ある。有機農業や市民運動を支持してきた民間人を政府長官に任用した点からも、政府の親環境農業への意気込みが理解できるだろう。親環境農業という言葉も金元長官が命名したものだ。1998年に親環境農業育成法を制定、翌年からは、親環境農業の実践農家への直接支払制度を始めた。
法律の制定にとどまらず、親環境農業の需要拡大にも政府が乗りだした。一定の規模以上の売り場面積を持つ小売店には、親環境農産物を販売するコーナーづくりを強力に推奨した。トップダウンの韓国らしいやり方だが、こうしたキャンペーンは、消費者には聞き慣れない親環境農産物の認知度を高める役割を果たした。

【認証取得と直接支払いがセット】

親環境農業の定義、実践者への直接支払い制度について紹介しておこう。農林水産食品部によると、親環境農業は、“持続可能な農業により、農業と環境を調和させ、農産物の安全性と環境保全を両立させる農業”を指す。生産された農畜産物は「親環境農産物」と呼ばれ、さらに「有機農産物」、「有機畜産物」、「無農薬農産物」、「抗生剤無畜産物」に分類される。
2015年まで「低農薬農産物(日本の減農薬栽培)」もあったが、農薬の使用量をどの程度減らしたものか消費者にわかりにくいという理由で、廃止された。それぞれの定義は次の通りだ。

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