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ひとつは、認証審査の厳格化だ。2013年に認証制度の不正が相次いで発覚し、国立農産物管理院が認証機関の許可取り消しを含む取り締まりを強化した。このため、認証を受ける農家数が減少したといわれている。
2番目に農業の人手不足及び農業資材の高騰により、生産面積を減らす生産者が増えたという点。いくら人手不足だとしても、これほど急激に面積や生産量が落ち込むものかと疑問視するかもしれない。2019年、韓国の農村を訪れた際、有機農家の1人がこう話していた。「政府の方針で、最低賃金が上昇した。これは外国人労働者にも適用される。上昇した最低賃金を払うことができず、外国人の採用をやめた。周りにも面積を減らした農家がいる。うちはたまたま会社を辞めた息子に手伝ってもらっている」。最低賃金の上昇により、雇用を継続できず、面積や生産量を減らしたという親環境農家がいても不思議ではない。
3番目は、EUに端を発した「たまご騒動」との関連だ。卵から殺虫剤の成分「フィプロニル」が検出される事態が欧米で起き、2017年頃には韓国にも飛び火した。発覚した養鶏場のなかには、有機畜産の認証を取得していた養鶏場が含まれており、消費者の有機に対する信頼が損なわれ、市場が縮小したということである。
紆余曲折を経て、韓国の親環境農業はいまに至っている。親環境農産物の市場規模(2018年、有機畜産物を除く)は、1兆2868億ウォン※3(約1252億円)と、ピーク時(2012年で約2兆1300億ウォン※5)の約6割に縮小している。親環境農産物の市場全体に占める有機の割合は約30%である。親環境農産物の小売価格は、慣行栽培の農産物に比べ割高で販売されており、筆者が韓国取材をおこなっていた2000年代は、1.5倍~2倍の価格差があった。野菜に比べ、米はさらに価格差が大きかった。
親環境農産物の流通ルートは、図1の通りだ※6。生産者の出荷先として最も多いシェアを占めるものは各地の農協であり、消費者の口に入る末端では、学校給食が高いシェアを持つ。農協が最大の出荷先であり、学校給食が最大の需要先であるというのは、日本では考えにくい。後半では、いかにして、学校給食が親環境農産物の最大の納入先となったのかを取り上げる。
【学校給食への導入が進んだ2つの理由】
韓国の親環境農産物がいつぐらいから学校給食で使われるようになったのか、いかにして食材に占める親環境農産物の比率が伸びてきたのかを紹介する。
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