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特集

AGRI FACT(前編)


日本の学校給食は、文部科学省が所轄官庁であり、農林水産省ではない。韓国も同じスタイルで、学校給食は、農業に関する政策をつかさどる農林水産食品部ではなく、教育部という政府機関が管轄している。また、学校給食の食材の供給は、地方自治体が決めており、親環境農産物を積極的に使うために条例を制定した自治体もある。つまり、政府が学校給食の食材をコントロールしているわけではない。
親環境農産物が学校給食で広く使われるようになった背景には、2つの流れがある。ひとつは、学校側と学校周辺の農家との連携による食材供給だ。地元の子どもたちのために、近隣の農家が食材を届けるという取り組みは日本でも見られる。キム・ヒョンチョルらの調査では、1990年代に、農家が地元の小学校に農産物を届ける取り組みが各地で始まり、2000年代に入ると、この取り組みが親環境農産物の供給へと発展していった。学校によっては、親環境農産物が食材全体の90%というところもある※7。
もうひとつの流れは、市民運動の盛り上がりだ。2003年に大統領選挙で当選した故盧武鉉大統領は「学校給食の直営化(外部委託の廃止)、国産化、無償化」を公約に掲げていた。しばらく実行されなかったため、「公約を守れ」という市民運動が各地で起きた。この波に乗ろうと、各地方議員候補が地方選挙の公約に学校給食の直営化、国産化、無償化を掲げ、メディアでも数多く取り上げられた。学校給食がいわば政治イッシュー化したわけだが、結果として、学校給食の直営化が各地で進み、食材の国産化、地産化、さらに親環境農産物の活用へとつながった。

【差額分は自治体が負担】

韓国農水産食品流通公社と地域農業ネットワーク協同組合が、学校給食における親環境農産物の使用実態や課題に関し、詳細な報告書を出している。これによると、2017年時点で、小中高校は11800校(生徒数では5753000名)あり、すべてで学校給食を実施している。学校給食実施のための予算は5兆9000億ウォン(1ウォン=約0.097円、約5732億円)で、約半分が食材費に使われるという。
給食費の負担する側の内訳を見ると、政府(特別会計)が約54%、保護者が約25%、残り(約19%)を自治体が負担している。親環境農産物と慣行農産物との差額は、自治体が負担しているようで、各自治体の差額負担分を合計すると1890億ウォン(約184億円)になる。表4は、自治体ごとの負担額を示したものだ。これによると、差額負担は市道と市郡区で負担しあっている自治体が多い。なお、「市道」とは、日本の都道府県に加え、ソウル市や釜山市など広域都市も含まれる。「市郡区」とは、日本の市町村にあたる。テグ市やインチョン市のように、市道のみが負担する地域もあれば、忠清北道のように、市郡部のみが負担する地域もある。また、一部の地域では、市道や市郡区に加え、日本の教育委員会に該当する「教育庁」が、費用を負担するところもある。

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