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特集

AGRI FACT(前編)


学校給食に使われる食材の調達ルートは主に2つある。ひとつは、学校ごとに入札をおこなって民間の納入業者から調達する方法。もうひとつは、多くの自治体にある「学校給食支援センター」を通じて調達するケース。学校給食支援センターは、給食用食材の地産地消をすすめるために、学校給食法によって設置が決められている。同センターの構成員は、実際に給食用の食材を生産している農家も含まれる。
使われる食材のボリュームで見れば、民間の納入業者のほうが多く供給しており、親環境農産物に限れば、センターからの供給が多い。しかし、同センターは組織的に脆弱で、納品や物流の体制が十分に整備されておらず、品質管理などが徹底されていないという課題も抱えている※1。
新型コロナウイルスの感染が拡大した当初、日本同様、韓国でも学校が一斉に休校になった。そのため、親環境農産物が一気に行き場を失うという事態に見舞われた。まもなく、学校は再開され、この問題も解決したが、本来、安定した需要が見込める公共調達を軸とした親環境農産物の流通が思いもよらない形で出口をふさがれる形となった。

【学校給食が親環境農産物の受け皿に】

学校給食の実施に関する最新データ※8によると、小中学校の数は11818校で、学校給食のための予算は6兆4822億ウォンとなっている。一方、保護者の負担率は減り、11.6%となっている。これは、給食無償化の動きが各自治体で進んでいるためと考えられる。ソウル市のウェブサイト(2021年2月21日付け)によると、2021年1月より、市内の小中高校すべてで、全国初の「親環境農産物を利用した無償給食」に踏み切ることにしたという。
前半で、韓国の親環境農産物の出荷量は、2010年をピークに減少傾向に入ったと書いた。一方、学校給食での親環境農産物の需要は2000年以降伸び続けている。勢いを失いかけた親環境農産物の需要を、学校給食がうまくカバーした。韓国の(株)地域農業ネットワークのパク・ヨンボム代表は、「地域農業と学校給食の連携活性化方案」の中で、「販路開拓の難しさや消費者に付加価値が伝わりにくいという事情を抱えていた親環境農産物が、学校給食という受け皿ができたことで、好循環が生まれる可能性が高まった」と指摘している。しかし、一方で、公共調達がなければ市場を維持できかねないという見方もできる。
この先も、学校給食という公共調達を軸に、親環境農業の生産及び流通が維持されていくのか、あるいは個々の消費者の購買行動に変化が起きて、親環境農産物のマーケットは新たな段階に移行するのか、成り行きを見守ることになるだろう。

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