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スマート・テロワールの実践者たち

農業×若者×ITが爆発的進化を遂げる月山高原 山形県鶴岡市/岡部 勝彦 氏((有)佐藤測量設計事務所)高田 庄平 氏(ベジパレット)


日ごろから健康に留意する人にとって人間ドックや血液検査が有益な参考情報を与えるのと同じく、農業者にとってもこれら検査は、勘や経験に基づく工夫を邪魔するものではなく、むしろ強化するものだ。
このような工夫の結果、単に収量を増やす、病害虫を減らすというだけでなく、用途に応じた食味や香りの作り分けも、実現できるようになってきた。
たとえばニンジン(クリスティーヌ)の栽培では、2年間の取り組みで栽培方法に改良を加え、糖度7~8でニンジンらしい香りを残した加工品向けと、糖度10~12でニンジン臭さのないスーパー・レストラン向けを、収量は共に10a当たり6tで、作り分けるのに成功した。青果バイヤーやスーパーなどから来年度からの取引依頼が多数あり、東京の超高級ホテル内のレストランでも採用され、売上は共に10a当たり90万円となったという。
山形県での標準的なニンジン栽培では、農薬成分使用回数は12回、10a当たり平均収量は1.2tであるのに対し、ベジパレットでは農薬を2成分に抑えつつ収量5倍を実現したわけだ。ちなみに「鶴岡市独自認証特別栽培農産物II型」の基準である「農薬3成分以下、化学肥料不使用」もクリアしている。
さらに同社では、土壌の物理性(硬度や深度など)、生物性(腐植の状況など)も計測し、グラフやチャートなどで見える化している。これらの組み合わせで、多様な畑作物の栽培手法の研究開発を、日々進めているわけだ。

農業機械や農業用AIを自作する

IT企業のシステムインテグレータだった経験を活かし、庄平氏は、自動農業機械の自作にも挑戦している。同社ではこれを「DIYロボティックス」と呼んでいる。たとえば、位置情報を利用してパソコンで描いた経路どおりに走行する機械や、気象データを収集するICT機器を自作した。
前述の「月山高原活性化検討チーム」によるトウモロコシ巨大迷路は、ベジパレットの畑で行なわれたイベントだが、この迷路は、まだトウモロコシの生育が進まないうちに、密植した畑の中にこの機械を縦横に走らせることで、製作されている。
ベジパレットでは、月山高原の観光振興に関わっている山形大学大学院所属の市浦氏や森氏とも連携し、様々な自作ロボットや自作AI(人工知能)を、地域の子どもたちのDIY教育に応用すべく、計画を進めている。
工業やサービス業の世界でIT技術の活用が事業の核心部分になってきているように、農業経営者にとっても、ITへの最低限の理解とその活用は不可避かつ緊急の事項であろう。しかし多くの農業者にとっては、農業機械や農業関連IT機器というのは、業界外の事業者から買ったり指導されたりするものでしかない。逆に業界外の事業者には、農業に関する知見がなく、他の業界に向けた製品をそのまま農業に持ち込んでもうまく機能しないことが多い。

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