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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

パラグアイ 違法な大麻栽培の10倍以上の収入に!ヘンプを家族農業モデルで支援


一方、パラグアイ政府は、国家や社会習慣に対する脅威として大麻を含む薬物を犯罪扱いとしている。72年に法律357号を、刑罰を重くした法律1340号を88年に制定した。なお、個人的な所持は大麻10gまで、コカイン2gまでは犯罪に問われない。
2009年の『世界薬物報告』(国連薬物犯罪事務所)では、大麻の輸出額が7億950万米ドル、コカインが8億米ドルと推計されている。これらを合わせると、同国の主要輸出品である大豆の16億米ドル(1760億円)と同規模になる。また、パラグアイ国家麻薬対策局(SENAD)は、6000~7000haの違法大麻栽培があり、約2万人の農家がブラジルとの国境エリアの零細経済を支えているという。
違法な大麻取引ゆえに流通価格が高くなり、密売組織間の縄張り争いが絶えず、ブラジルとの国境エリアの4県では殺人発生率が高止まりしている。政府は、警察だけでなく軍隊を使って、組織犯罪を取り締まっているが、資金も人も不十分なことから、賄賂で懐柔された腐敗構造が長年続き、ほとんど成果が上がっていない。

禁止政策から合法化へ

パラグアイの薬物規制は61年と71年の国連薬物条約を批准し、72年の麻薬および向精神薬に関する南米協定(ASEP)に基づく対応で、71年に米国のニクソン大統領が薬物取引を撲滅するために軍事介入するとした「薬物戦争」の南米版の始まりだった。しかし、数十年に及ぶ薬物戦争は、南米諸国を社会的に苦しめた。
そうした背景のもと、ブラジル、コロンビア、メキシコの大統領経験者3名を中心に17名が立ち上がった。違法薬物に対する米国の禁止政策と欧州のハームリダクション政策注を批判的に評価し、09年に「麻薬と民主主義に関するラテンアメリカ委員会」の宣言にまとめたのだ(図1)。米国の薬物戦争から脱却し、薬物を刑罰で処遇するのではなく、健康問題として扱うことを提案したこの宣言は、南米諸国の大麻政策の路線変更に多大な影響を与えた。
その後、13年にウルグアイが密売組織の壊滅のために産業用ヘンプ、医療用大麻、嗜好用大麻を同時に合法化した。その動きを見て、ほかの国々でも農民組織、政治家、民間企業などの分野で大麻法改正の機運が高まった。医療用大麻は15年にジャマイカ、チリ、プエルトリコの3カ国が、16年にコロンビアが、17年にメキシコとペルーで合法化され、中南米諸国に一気に広がった。パラグアイも17年に法律6007号により医療用大麻の合法化に踏み切った。12企業に免許が交付され、生産、加工、輸出に向けた準備が進んでいる。

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