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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

パラグアイ 違法な大麻栽培の10倍以上の収入に!ヘンプを家族農業モデルで支援



ヘンプは国益作物と宣言

近年、ヘンプの分野でも動きがあった。19年に法律2725号が施行され、マリファナの主成分であるTHC濃度が0.5%以下を「非向精神性大麻(ヘンプ)」に、0.5%を超えるものを「向精神性大麻」に分類し、大麻草の扱いは農業省の管轄になった。
さらに、20年8月にはマリオ・アブド・ベニテス大統領が「ヘンプは国益作物である」と宣言し、ヘンプ栽培の小規模農家向けの支援プログラムに署名したのである。農家は最大2haのヘンプ栽培が認められ、1ha当たりの収益見込みは、約1000万パラグアイグアラニー(約20万円)という。同国の一人当たりの国民総所得(GNI)が5240ドル(約58万円)であることを考慮すると、小規模農家の収益向上が期待される。亜熱帯性の気候により年2回収穫ができれば、違法な大麻生産よりヘンプ栽培のほうが10倍以上の収入になると強調している。
政府はヘンプ農業に2万5000世帯が従事することを想定しており、貧困国でヘンプを家族農業モデルで支援するという興味深い政策である。国立農業技術研究所が、ハンガリーやフランス、中国、米国から輸入したさまざまな品種を試験栽培し、その生育状況を評価し、地域に合った品種選定のサポートを行なう。
また、民間側では、20年にパラグアイヘンプ商工会議所(CCIP)が組織化され、これまでに約200haの作付け実績が報告されている。南米でスーパーフードを40カ国に輸出を手がけているヘルシーグレイン社が、食品加工に投資している。20年産のヘンプナッツ、ヘンプオイル、ヘンプパウダーの計1tを米国に初めて輸出し、第一歩を踏み出した(図2)。今後は、睡眠改善、抗不安、抗炎症作用が注目されている大麻草の機能性成分であるCBDの商品化を進めていくという。
裏経済の違法な換金作物から、表経済の合法な換金作物に転換を促す政策は、同国の社会構造に大きな改革をもたらすだろう。困難な道かもしれないが、パラグアイ農業の新たな挑戦が始まった。

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