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特集

AGRI FACT(後編)

小社が2019年10月に開設した、農と食に関する情報をフェアな立場で提供するサイトである「AGRI FACT」をこのほどリニューアルした。見やすさはもちろん、コンテンツも日々充実に努めてきた。閲覧したことのない人や更新後の内容に触れていない読者のために、いくつかピックアップして情報を届けたい。農業の健全な技術開発と人々に農業技術の安全性と安心を提供していくため、このサイトを活用していただければ幸いである。

(4)コラム・マンガ

[農業は存じておりませんが、何か?  福本 若芽]

[第11回 農薬の勉強会を開きませんか?【分断をこえてゆけ 有機と慣行の向こう側】間宮 俊賢]

『沈黙の春』や『複合汚染』時代に植え付けられた農薬に対するネガティブイメージは連綿と受け継がれ、情報がアップデートされていない人々は少なくありません。間宮さん自身もかつてはそちら側でしたが、農薬の勉強会への参加を通して考え方を改めます。正しい理解こそが重要だと、そうした機会を設けていくことを提案するのでした。

■農薬のことは何も知らないけど農薬が嫌い

「農薬」という言葉が会話に出れば、とりあえず少し苦々しい顔をしてみせる。「農薬、良くないよね。最近もまた、ほら、ミツバチがやられてるってニュースが出てた」
「どうしてなくならないんだろうね」と、いつまでも変わらない社会を嘆く感じでため息を漏らしてみる。
「でもさ、目の前の、いまできることからやっていくしかないよね」とか言って、いい感じに話をまとめようと試みる……。
過去の自分は、おおむねこんな感じだったと思う。今だからわかるが、一見憂えているようで、なんだか他人事みたいだ。すでにオーガニックを選んだ自分には関係ないところで起きている問題を、遠くから見下ろしている感じ。決定的に抜け落ちている認識があるが、そのことにも気づいていない。

■ 怖い話だけは知っている

話は前回のエピソードから緩やかに続く。NPO「みつばち百花」と出会った影響で、農薬についての様々な思い込みを覆され、僕は混乱していた。
その後、連載でも取り上げた東日本大震災後の迷走や、近隣農家との交流も経て気づいたのは、これだけ日頃から無農薬、無農薬と言っている僕ら(オーガニックカフェ)が、いざ農薬について具体的に聞かれたら、何ひとつまともに答えられない、という矛盾だった。
もちろん、いわゆる怖い話はそれなりに知っている。レイチェル・カーソン『沈黙の春』とか、有吉佐和子『複合汚染』とか。DDT、枯葉剤とか。とにかく悪い情報だけは山ほど聞いてきた。
でも、あえて農薬を使っている側にとっての必要性に耳を傾けたことがあっただろうか? そもそも誰に聞けばわかるの? だいたいレイチェル・カーソンって何年前さ? 本当にそれから何も状況が変わってないの? 他人からの伝聞の積み重ねだけで、鬼か悪魔みたいに嫌ってたの?
どんな理屈を並べたところで悪は悪なんだから、“相手の言い分”なんかに耳を傾ける必要がないってその態度、本当にスローでフェアで持続可能と言えるだろうか?

■ 農薬の勉強会を開いてみた

もちろん僕らの店は、いたずらに農薬の恐怖を煽ったり、安全を売りにするようなコミュニケーションからはできるだけ遠ざかるようにしてきた。それは今でも間違っていなかったと自負している。
とはいえ、なんだかこのままでは気持ち悪い。
そこで、「みつばち百花」の中村純教授(玉川大学ミツバチ科学研究センター)に相談したところ、カフェスタッフ向けに「農薬の勉強会」を開いていただけることになった。スタッフには勤務時間外で任意参加としたが、思いのほか多く参加してくれた。

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