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江刺の稲

ガラパゴス化がさらに進む日本農業

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第303回 2021年09月21日

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本誌執筆者の一人、熊野孝文氏が主幹する「米穀新聞」が10月で廃刊になるという。その理由は、2011年から試験上場が続いていたコメの先物市場が廃止になることが決まったことを受けてのことだという。その詳しい経緯は熊野氏自身に寄稿を依頼した今月号の「コメ先物市場が消えた日」をご覧いただきたい。
さらに、今月号の「土門辛聞」で土門剛氏は、本上場承認に傾いていた流れを反転させたのは自民党国会対策委員長の森山裕議員ではないかと書いている。コメ市況が低迷している中で選挙を意識して自民党農林部会に圧力をかけたというのである。
そもそもコメ先物の本上場には農水省はもとより菅総理をはじめ自民党農林部会も容認するものとみられていた。しかし、かねてからの農協組織の思惑通りになってしまったのだ。
大阪堂島商品取引所の主要株主であるSBIホールディングスの北尾吉孝社長は、「これを否定することは、『無知蒙昧』の、経済を知らない、世界を相手にしない人たちだ」と強く批判した。
まったくその通りである。
コメ利権を一手に握りしめていたい農協組織の強い抵抗を受け、さらには時代錯誤のコメ・水田政策のぬるま湯に浸かったままのコメ農家たちの無関心が続く中、将来を見据えて試験上場を続けてきた先物市場。高齢化の進行と意欲ある水田農業経営者の登場によって日本農業が課題としてきた構造改革が進みつつあるにもかかわらず、我が国のコメ農業はまさにガラパゴス化の様相を呈している。瑞穂の国などと威張ってみても、中国にはすでに大連、上海にジャポニカ米の先物市場が成立している。健全な消費市場の動向を反映する先物市場とそれを参考に経営判断をしていくという世界の農業経営者たちの常識から取り残されてしまうのである。日本農業の将来より組織維持を優先させる農協組織と選挙対策のために未来を危うくさせる理念無きご都合主義の政治家たちの仕業である。

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