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【山口亮子の中国のアグリテック最新事情】
1兆円市場 中国スマート農業の構造
- (株)ウロ 代表取締役 山口亮子
- 第6回 2021年09月21日
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スマート農業の浸透1%未満
約622億元(1兆550億円)。前瞻産業研究院が発表した2020年の中国のスマート農業の市場規模の推定額だ。同院によると、スマート農業の浸透率は1%に満たない。「浸透率が年々上がっている状況にかんがみて計算し、我が国の農業生産額と合わせることで推定した」ところ、この額になったという。
日本はというと、矢野経済研究所が20年度の市場規模を約181億円と予測している。富士経済が2030年のスマート農業の国内市場として予測したのが1024億円と、中国の現在の規模の10分の1とほぼ等しい額になっている。
中国でスマート農業に当たる「智慧(知恵)農業」という概念が登場したのは、14年のこと。16年から毎年、中国共産党中央が年初に出す最初の文書「1号文件(文書)」で智慧農業に言及してきた。
1号文件は、その年の特に重要な政策決定を示す。04年以来、18年連続で農業問題が主題に選ばれてきた。中国では農地が国土の5割強を占め、戸籍上は農民が9億人もおり、農村と都市の格差は開く一方だ。そのため、農業や農村の課題解決が中国共産党にとって焦眉の課題になっている。スマート農業は、そんな農業政策の重要な構成要素だ。
農業問題は最重要課題
なぜスマート農業が重視されるのかを説明する前に、中国農業の現状を整理しておく。農林水産業の産出額は1兆ドルを超える。農民戸籍を持つ人は9億人超であるものの、出稼ぎなどで農村を離れている人口が相当いる。それでも、農業従事者は3億人いる。GDPに占める農林水産業の割合は下がり続け、7%台まで落ち込んだ。改革開放政策の始まった1980年代は30%台なので、農業の地位の下落ぶりが分かる。
農業経営体当たりの耕地面積は0.64ha(2015年)で、日本の平均の2.15ha(2020年、北海道を除く)を大きく下回る。農民が多いわりに農地が狭く、労働生産性が低い。
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山口亮子 ヤマグチリョウコ
(株)ウロ
代表取締役
ジャーナリスト。2010年、京都大文卒。13年、中国・北京大歴史学系大学院修了。時事通信社を経てフリーになり、農業、地域活性化、中国について執筆。⑭ウロ代表取締役。農業や地域のPRを目的としたパンフレットや広告、雑誌などの企画・制作のほか、ツアーやセミナーの運営を手がける。著書に『図解即戦力 農業のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(共著)がある。
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