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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

フランス(2) 無形文化遺産による保護・継承とヘンプ生地国内製造への挑戦

フランスは人口6700万人を有し、国土面積は日本の約1.5倍。その50%を農用地が占める。本連載の冒頭(2018年2月号)で紹介したとおり、昔も今も欧州最大のヘンプ栽培国である。
1965年に大統領に選出されたド・ゴール氏は、農業とエネルギーの分野で英米に依存しない独立的な立場をとった。その結果、61年の麻薬単一条約をきっかけに東西冷戦下の西側諸国がヘンプ栽培禁止の国内法を整備したにも関わらず、フランスは特に禁止しなかったことが影響している。19年のヘンプの栽培面積は欧州全体で約5万haだが、フランスはその3割に当たる1万7000haに及ぶ。

無形文化遺産として伝承される長繊維の利用

90年代以降の近代的なヘンプ産業の復活によってフランスでは、ヘンプ繊維を利用した製紙、住宅用断熱材、自動車内装材の生産が産業化した。だが、利用しているのはいずれもヘンプの短繊維だ。つまり、中世以降、ロープや糸、布地のために長らく続いてきたヘンプの長繊維の利用は、ほとんど失われたままなのである。
近年、フランス文化省は独自にヘンプ長繊維を利用した取り組みを無形文化遺産に登録してきた。同省が毎年発行している無形文化遺産目録に20~30ぺージに渡る現況調査レポートを収載しているので、概要を紹介しよう。

【ブリアンソン地方のヘンプ栽培(15年に登録)】 非営利団体のブリアンソン地質鉱業協会(SGMB)が09年から毎年夏の『忘れられた技術の日』というイベントで学校や地域の人々、観光客に対してヘンプの糸や織物体験を企画している。この地方は山岳地帯で、ヘンプの糸や織物製作は寒い冬の生業だった歴史があり、唯一の伝統的なヘンプ栽培者が一人で献身的に技術の伝承活動をしている。

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