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スマート・テロワールの実践者たち

農協が担う最先端の「農村経営」 大都市にない豊かさの源泉とは 静岡県浜松市 後藤善一氏(JAみっかび前組合長)/北海道北見市 小野寺俊幸氏(JAところ会長理事)

農協というのは、因果な組織だ。実態をよく知らない都市住民からは否定的なイメージを持たれているし、農山村に住んだり関わったりしてその実態を知っている人からも、悪しざまに言われることが多い。「コメへの保護政策にしがみ付いて補助金に依存し、農業よりも金融保険事業に注力する組織」だとか、「組織維持のために合併を繰り返し、地域から離れて肥大化し政治化した、既得権擁護の団体」といったような感じだ。
だが全国には、旧来のやり方と決別しイノベーティブな活動を進める単協も、あちこちに存在する。共通点はまず、産品や販路を工夫して農家の収入を増やしていること。それから、農法や地域内循環の仕組みを工夫して、肥料、農薬、飼料などの購入を減らしていること。そうした農協には必ず、改革を行なう優れたリーダーがいる。
中には、農協が農業者団体という枠を越え、「農村の経営」をも担っているようなケースも出てきているのだ。

合併された町の暮らしを支える農業と農協

「平成の大合併」の評価は、地域によってさまざまだ。だが、「範囲を広げ過ぎではないか」とされる事例も多いだろう。典型が、12市町村が合併して政令市となった、静岡県浜松市だ。その浜松市北区の西端部、浜名湖の北西岸に面して、人口1万4千人(2015年国勢調査)の旧町がある。
合併後16年を経たが、今も独立した町という雰囲気を残す。というのも、市内の他の地区に行く道は、浜名湖北岸を走る国道362号か有料の東名高速、あとはカーブだらけの山道しかない。区役所まで12km、市役所へは26kmと遠く、愛知県の豊橋市への方が19kmと近い。そんな旧町内に残る最大の事業所が、120名の職員と1500名以上の正組合員を擁する、三ヶ日町農業協同組合(JAみっかび)だ。

ミカン生産に特化した旧三ヶ日町(浜松市北区)

旧三ヶ日町は、南は浜名湖(正確にはその湾の一つ猪鼻湖)、北と西と東は標高200~400mの丘陵に囲まれた、10km四方ほどの小天地だ。だが土地利用の状況は、日本の他所とは相当に違う。
第一に、この町には水田があまりない。静岡や愛知はハウス農業の拠点だが、ここではビニールハウスもあまり見かけない。浜松市内で最近どんどん増えているメガソーラーも、目立たない。
代わりに、町内のあちこちが、ミカン畑で埋め尽くされている。平坦部の、長方形に耕地整理された農地でも、水田をミカン畑に変えた部分が目立つ。数字でいえば、旧町内の農地1900haのうち9割近くがミカン畑で、水田は5%ほどしかない。そう、三ヶ日は、ミカン生産に特化した町なのだ。

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