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新・農業経営者ルポ

有機農家の専門農協を作りたい


西条市は有機栽培が盛んな地域ではなく、愛媛県も有機食品の消費が旺盛とは言えない。
「最初は売り先に苦労しました。農家と消費者を結ぶ『食べチョク』や『ポケットマルシェ』がよく使われるようになったのも、ここ2、3年の話。僕が就農したときには、何もなかったですからね」
就農当初から数年間は、高知市にあるオーガニックマーケットに出品するため、毎週土曜日になると片道2時間かけて四国山地を越え、高知に通った。そのうちに、固定客からの注文が増え、愛媛のデパートの催事に出るようになり、全国規模の展示商談会にも出展して販路を広げていった。
この時期は「頭から湯気が出るんじゃないか」というほど忙しかった。有機農家は、JA出荷にすれば作ることに集中しやすい慣行農家に比べ、販売や情報発信などマルチな才能を求められるからだ。
「1人で生産して、1人で売って、事務もしてで、すごい大変でした。ときどきアルバイトを雇ったんですけど、作業内容を全部指示せないかんから、手は増えているのに、頭は増えんじゃないですか。自分のことだけじゃなくて、その人に何をさせるかも考えないといけないし、当然仕事も自分と同じようにはできないので、すごいしんどかったんですよ」
目の回る忙しさに圧倒されそうだった時期を乗り越えられたのは、妻、陽子との出会いのおかげだという。陽子が2018年からマネージャーとして事業に携わるようになってから経営を安定させ、全国農業青年クラブ連絡協議会会長として全国の農家と交流したり、他の有機農家との連携を考えたりできるようになった。

コメの有機栽培で土地を守る

19年に法人化したのは、人を雇用できる体制を整えたいという思いがあったからだ。
「地元の集落で40代以下でコメを作っているのは、僕だけなんですよ。なので、組織として地域を守っていかなければならない責任を負っているという自覚があるんです。人を受け入れられる体制にしていかないとと思って、早めに法人化しました」
周囲には、施設園芸や畑作物を中心に生産する若手がパラパラいる程度。首藤は土地利用型作物であるコメを主体に経営するからこそ、農地を守れると考えている。
「施設園芸だと儲かるかもしらんのですけど、そんなに面積はいらんから、誰かがこの田んぼを引き継いでいかんといかん。それをやる意志と責任を持っているつもりです」
折しも、農水省が2050年に有機農業の農地を全体の約25%(100万ha)にすると掲げた「みどりの食料システム戦略」を策定した。最新のテクノロジーを使えば25%にできると主張していて、具体的な中身がないと批判も浴びている。首藤も「有機栽培を広げるための戦略がない」と指弾しつつ、「有機農業25%という大きな見出しを持って、有機の拡大に向かって攻めやすい材料ができたのは、大きなこと」と評価する。

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