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特集

堂島ショック コメ産業の社会的インフラ

堂島コメ先物が土壇場でひっくり返った。ほぼ確実視されていた本上場が、なぜ不認可となったのか。そこには「政治」が大きく働いたと言われる。 いまコメ産業は急速な構造変化が進んでいる。みずからマーケットを見据える新しい経営者も続々登場してきた。「政治」が市場に横やりを入れるのは時代に逆行し、コメ産業の発展を阻害するものでしかない。

【1】コメ先物終幕で逆流がはじまるのか 政治に頼らなくなったコメビジネス/大泉 一貫 宮城大学名誉教授

【またぞろ政治介入かとざわつきだしたが】

9月中旬、複数の農家の方から新米を送っていただいた。毎年感謝しながらたべている。御礼の電話で少しコメの話をした。「コメはまた政治の時代に戻るのか?」と心配の声が混じっていた。「そうはならないだろう」と応えておいた。
その頃、確かに政治の季節を思わせるようなことが続いていた。総選挙でその動きが高じるかもしれない。背景にはコロナ禍での業務用米の販売低迷があった。令和3年産米の需要予測に比べ作付過剰が言われていた。米価下落が懸念され、自治体でのさらなる転作の深掘りが求められた。
そうしたところに堂島先物の本上場を不認可にするというニュースが飛び込んできた。ある政治家の独断との噂だった。
くすぶっていたコメ過剰の流れは8月下旬、全農のコメ概算金の下落となって現れた。一部で「やれ政府はどうしてくれる、自治体はどうしてくれる」といった声が聞かれるようになった。政治家の姿が見え隠れし、コメへの政治介入を期待する動きが表立つようになった。
コメが政治で動いてきた「保護農政」の時代を彷彿とさせる動きだった。我々はこの時代の政治システムを、「政官業のトライアングル」と言ってきた。それを終焉に導いたのが「官邸主導」だった。
「官邸主導」を進めてきた安倍内閣が終わり、引き継いだ菅内閣が終わるというこの時期、保護農政への逆流が現実味をおびて感じられる事象が続いた。
だが、繰り返すが、私は、そうはならないと思っている。
実際、この間あった自民党の総裁選では、候補者が全中を訪れて支援を求めたものの、農政論議は低調だった。ましてやコメをどうするといった議論は殆ど聞かれなかった。

【政官業の保護農政に戻らない三つの理由】

ところが思わぬところから「保護農政」復活がくすぶりだした。総選挙を控えた野党がいち早く反応した。政府主導の生産調整やコメの市場隔離、戸別所得補償政策をまたぞろ公約に持ち出したのである。
直接支払い(戸別所得補償もその一つ)は、私も必要と考える政策手法である。だが、制度設計を間違えると農業を衰退に追い込んでしまう。野党の戸別所得補償政策は「保護農政」をさらに強固にしようとするものである。制度設計を間違えており、この政策ではコメ産業は明らかに衰退する。経営者の判断や主体性、市場動向を無視した政策だからである。ナラシや収入保険、水田利活用の制度がある中で、自民党からリップサービス程度の対策はあったとしても、こうした保護的政策が総選挙で燃え上がるとは思えない。
保護主義的農政には戻らないと考えている理由は三つある。

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