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コメが政治的ビッグイッシューの座から降りつつあることが影響しているが、それには先に書いたことに加え、近年日本が抱える環境の変化がある。
今日本が抱える大問題は、世界の中で安全に国家を維持し続けられるかにある。
コロナ、年金、外交、防衛、国土保全、デジタル、エネルギー等々いずれも政治が機能しないと国家存亡の危機に陥ってしまう課題が山積している。農業に関しては食料安全保障がビッグイッシューだ。国土保全も入るかもしれない。だが、生産調整や、コメの市場隔離をいくらやってもみじんも食料安全保障に寄与しないことを皆知っている。政治家は、こうした「事の軽重」を敏感に判断して行動している。農林族の変化にはそうしたことが影響している。
【稲作経営は新陳代謝しコメ産業は構造調整に】
稲作経営は新陳代謝していると書いた。今のコメ農政は、戦後の長い保護農政の反省の上に立っている。「農業の失われた20年」について話そう。
図1は、我が国の農業産出額の変化だが、1990年から2010年までの20年間で実に3割、3兆4000億円が失われている。これを「農業の失われた20年」と呼んでいる(注1)。
農業産出額の低下と農業生産性の後退が起き、そうした中でもコメだけは保護するなど、いわゆる「稲作偏重農政」が行なわれた。それにもかかわらず、農業産出額減少の7割、2兆3000億円は稲作の減少だった。野菜や畜産の産出額が2005年ぐらいから増加しはじめるのに、稲作だけは低下し続けた。「農業の失われた20年」とは「稲作の一人負け」だったのである。
「稲作一人負け」の理由は、保護農政にがんじがらめにされたためで、マーケットを見ながら比較的自由に経営ができた畜産や野菜とはそこに違いがあった。本来稲作を支援するはずの保護農政が成長の足かせになったのである。
それを変えたのが安倍政権の「攻めの農林水産業」だった。農業所得や農業産出額の増加を目指し、市場開発(需要の拡大)や供給力(付加価値・生産性)の強化、生産基盤の強化をはかろうとした。「マーケット主導、経営者中心の農政」などと言われている。
それでも稲作農家は、毎年5.2万戸ずつ減少し、2020年時点で71万戸となっている。このまま推移すると、10年後には16万~20万戸となる(図2)。それを補うように稲作経営の大規模化が進んでいる。それが稲作の新陳代謝、構造変化である。
これにはかつて論争があった。2010年当時、稲作農家は117万戸あった。今後どんなに規模拡大しても「15haか20ha」が限界という「15ha限界説」が多くの農業経済学者の持論で、100ha経営も出現してくるといった私の様な意見は少数派だった(注2)。
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