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今では、縮小するコメ市場の中でも、100haを超える経営が多数出現しているのは皆さん承知の通りである。稲作経営者はフードバリューチェーン全体を視野に入れ、卸等とアライアンスを組みながらイノベーションに取り組み、作業工程を様々に工夫しながら規模を拡大している。中には、稲作だけでなく野菜や畑作などに乗り出す経営者もいる(注1)。レタスや、ブロッコリー、スイートコーン等の野菜から、大豆や麦、子実用トウモロコシ等の粗放な畑作物まで作付対象になっている(注3)。
現在、畑作等も含めた100ha以上の経営数は1933を数える。71万戸の稲作農家からすればほんの一握りもないが、全国の「作付け農地」の1割は彼らによって耕されている。50ha以上の経営となれば、8423経営を数え、「農地」の4分の1が彼らの耕作のもとにある(2020年農林業センサス)。
農政がどうであれ、民間で動きはじめたこうしたビジネストレンドはもはや変わりようがない。農業はもう農政に頼る時代ではなくなっており、逆に農政はこうしたトレンドを支援するより他なくなっている。食料安全保障にとって、何をしなければならないかもはや明確と思う。
おわりに
農業界はただでさえ小さい世界である。そこに対立の図式を持ち込むのは野暮と言うしかない。農家に限らない若い人が農業を職業として選択する時代に入っている。大規模経営に限らず、そこそこの所得で良いという小さな農業を望む若者も多い。彼らがどの様な経営形態をとるにしても、そのトレンドを止めてはならない。むしろ創意工夫できる環境作りこそ大切になっていると思う今日この頃である。
注1:農業の失われた20年やフードチェーン農業に関しては、拙著『フードバリューチェーンが変える日本農業』日経新聞出版社2020参照
注2:15ha限界説などについては、21世紀政策研究所編『2025年日本の農業ビジネス』講談社2017参照
注3:大規模複合経営の出現の可能性に関しては、拙著『日本農業は成長産業に変えられる』洋泉社2009や拙著『希望の日本農業論』NHK出版2014参照
筆者プロフィール
おおいずみ かずぬき
1949年宮城県生まれ。東京大学大学院修了、農学博士。
農業経営の成長を目指す農業改革や、農業政策、地域政策への提言活動に取り組んでいる。内閣府「規制改革(推進)会議」の委員などを歴任。
【2】『米産業に未来はあるか』の編集に携わって 農協は最大の受益者のはずなのに/黒崎 亜弓 ジャーナリスト
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