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スマート・テロワールの実践者たち

大津波でも流せない テロワールと人の底力 復興最前線の挑戦者たち(岩手県陸前高田市)

2万人以上が亡くなった東日本大震災から、今年で10年となる。しかし今の話題といえばコロナで、震災への関心は風化したようだ。「復興五輪」も、復興との関係がうやむやなままに終わってしまった。
しかしこの間も三陸の津波被災地では、粛々と、復旧(=元に戻す)、復興(=以前よりも良くする)に向けた取り組みが続けられてきた。三陸ならではの、奥深い山と澄んだ海のもたらす恵みは消えていない。コンクリートの防潮堤は100年ももたないが、百年後、千年後にもそこに、土地の恵みを受けて楽しく元気に暮らす人が住んでいるのであれば、復興は成ったことになる。
挑戦し冒険する傾向を持つ者は、人種・民族・文化を問わず一定数生まれて来る。彼らが、守り、根付く性格の者とセットになって相補うことで、人間という生物種は、地球の隅々にまで生存領域を広げてきたのだ。
被災後の三陸には、そうした挑戦心、冒険心に富んだ人が、義侠心にも駆られて多く移り住んだ。彼らが、震災の惨劇を経験してなお故郷を守り、根付いている多くの地元民とセットになって相補う先に必ず、他所以上に創造的な成果が表れてくるのではないか。
挑戦する者、守る者に指針を与えるのが、何度大津波が来ても流されることのない、三陸という土地のテロワールだ。復旧から復興にステージが移るにつれ、被災地の未来はますます、土地に根差した農林水産業と不可分になっている。そこに以下の一文を、雑誌『農業経営者』に掲載する意義があるだろう。

テロワールに根ざして未来をつくる

陸前高田市は、岩手県南東部の太平洋岸にある、人口1万8000人の町だ。
三陸とは、陸前、陸中、陸奥の3つの旧国にまたがるリアス式海岸地帯の総称だが、陸前が宮城県、陸中が岩手県、陸奥が青森県におおむね該当する中で、この町は陸前を名乗りながら岩手県に属している。しかし南隣の宮城県気仙沼市から、この高田を挟んで、北隣の大船渡市までは、「気仙(けせん)地方」とも呼ばれ、県境に関係なく共通の風光と地域文化を持つ。
気仙地方の気候は、「東北」という先入観に反して穏やかだ。湾入部の波の静けさも大きな特徴で、東京からの訪問者なら、伊豆あたりの荒波の太平洋と、余りにイメージが違うことに驚くだろう。鏡のような海面には随所に筏が浮かび、寒流の親潮のもたらすプランクトンと北上高地からの流れのもたらす栄養分を受けて、世界最高級のホタテやカキなどの養殖が営まれている。
大津波は、人間活動の一切合切を引き流したが、湾底に溜まったヘドロも掃除され、他方で斜面の上の山林は何ら変わらずに残って栄養を生み続けているため、養殖の水揚げはかえって増えたともいう。ただし小さな湾では、新設された防潮堤の堅固な土台が地下水流を遮断し、養分の流入が減るのではないかという懸念もある。

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