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スマート・テロワールの実践者たち

大津波でも流せない テロワールと人の底力 復興最前線の挑戦者たち(岩手県陸前高田市)


7万本の松の中からたった1本だけ、「奇跡の一本松」が残ったように、その川向いの当所でも奇跡は起きた。三陸北側の釜石市の水産技術センターの職員が、その放送を見て、微生物の研究のために預かっていた同社の「もろみ」を館内から探し出してくれたのだ。研究所も2階まで津波の被害を受けたのだが、瓦礫を掻き分けたところ1つだけ倒れていないロッカーがあり、その上から4kgのもろみが無事見つかったのだという。
そのもろみを増やし、県産の大豆や小麦を使い、一切の温度調節をせずに夏場を二度経験させる天然発酵で醸したのが、「奇跡の醤(ひしお)」だ。河野会長の子息を9代目社長に、内陸部に工場を再建した同社の、各種の良質な商品とともに、このCAMOCY内の同社のお店で購入できる。
だがCAMOCYの売りは、醤油や味噌だけではない。パンやチョコレート(チョコレートもカカオを発酵させた食品だ)が大人気で、発酵食を使う総菜店や、クラフトビールの店もある。
3セクではなく純民間出資の同社は、八木澤商店も主要株主だが、河野会長と同年代の盟友であり、県の中小企業家同友会代表幹事でもある田村満氏が、最大株主で社長だ。陸前高田市ほか県内数カ所でドライビングスクールを経営する田村氏は、陸前高田独自のテロワールを活かした本物づくりに強い情熱を持ち、多年地域おこしに取り組んできた。
このように地域を深く愛するベテラン実業家が、若者や女性に存分に創意を発揮してもらいつつ運営しているCAMOCYの店内には、よくある道の駅のようなコンセプトの揺らぎや、質の面での手抜きといったものが、みじんも感じられない。
八木澤商店以下、ここで取り扱う商品には通販でも購入できるものも多く、ぜひサイトも見ていただきたいところだ。しかし「この施設があるからこそ高田に行って、味わって楽しみたい」と思わせるだけの魅力が、ここにはある。

魚介に合わせるためだけのワインに挑戦する葡萄園

同じ陸前高田でも、CAMOCYとは反対方向の市街地の東にある老舗企業が、神田葡萄園だ。日露戦争のあった明治38年(1905年)の創業で、震災の直前にUターンして跡を継いだ現社長の熊谷晃弘氏は6代目である。
葡萄園の始まりは明治22年、気仙大工だった初代が、工事に出た先の宮城県から生食用のブドウの苗を持ち帰ったことだったという。大工は職人でもあるが、菜園も営む農業ベンチャーでもあったわけだ。しかし当時の当地の嗜好では生食ブドウは売れず、上記明治38年にブドウ果汁と、甘味果実酒の製造を始めたという。酒類醸造はいったん戦後に取りやめたのだが、その後も生果ではなく果汁生産に特化した全国でも珍しいブドウ園として、今日まで続いてきた。

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