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スマート・テロワールの実践者たち

大津波でも流せない テロワールと人の底力 復興最前線の挑戦者たち(岩手県陸前高田市)


上岡氏は今日も飄々と、第二の故郷に選んだこの明るい風土の町で、新たな産業の小さな芽を育てている。

20年計画を進めるワタミオーガニックランド

以上に紹介してきた取り組みは、しかし、いずれも「6次産業用地」として確保されたメイン部分以外で営まれている。メイン部分を利用する旗艦プロジェクトととして進行中なのが、体験型有機農業テーマパーク「ワタミオーガニックランド」だ。予定の敷地は23haあるが、うち3haが21年4月にモデルエリアとして開業した。
ワタミオーガニックランドの親会社は、飲食チェーンのワタミである。全国に居酒屋などを展開する同社は、2002年から自社仕様の食材の有機栽培を手掛け始めた。現在は全国に9つの有機畑作の農場と、2つの放牧酪農の農場をもつ、日本最大級の農業法人でもあるという。
モデルエリアでは、アーチ型の木造屋根の下で、岩手めんこい黒牛、南部どり、県産豚肉を揃って味わえるBBQ施設や、ハンバーガーショップのほか、野菜収穫の体験ができる「木づかいハウス」が営業を開始した。
畑のエリアではサツマイモを栽培中のほか、地元の人たちの参加を得て、マスカットベーリーA500本を植樹した。25年の初出荷を目指して、ゼロからワインを造るプロセスを、住民とともに体感する試みである。来春にはさらに2000本を植樹、同時にソーラーシェアリングも開始する予定だ。
オーガニックランド社長の小出浩平氏は、一級建築士であり、バイオクリーンルームを設計するゼネコンマンだったが、09年からワタミで、再エネ開発や林業等の新規事業に取り組んできた。19年より、東京と陸前高田を行き来しながら、20年がかりでの構築を掲げるこのプロジェクトに取り組んでいる。
土づくりからのスタートのため投資負担がかかるなど、オーガニックという理想と経済性という現実のギャップは大きい。大手企業のプロジェクトなので、そのままでは地域内の様々な主体との連携も進まない。だが小出社長は、03年に設立されたNPO法人サスティナブルコミュニティ研究所に事務局長として加わり、大企業社員でありながら、地域に深く潜り込んでかかわってきた人物だ。とにかく出会いと人の話を聞くのが大好きで、早稲田大学のMBA、衛生工学の技術士も持つ文武両道のマルチ人材でもある。
今般の陸前高田のセッションでも、小出社長は、6名の登壇者の選定・調整を一手に引き受け、被災地の今と未来を体感できる時間を準備した。その地域への没入の度合い、ネットワーク力は、得難いものである。コロナ禍で、集客交流事業そのものが危機に瀕している現在だが、耐え忍んで地道な努力を重ねたその先に、大輪の花が咲くことを心から期待したい。

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