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スマート・テロワールの実践者たち

大津波でも流せない テロワールと人の底力 復興最前線の挑戦者たち(岩手県陸前高田市)



地域内循環を担う地域エネルギー

冒頭に「被災後の三陸には、挑戦心、冒険心に富んだ人が、義侠心にも駆られて多く移り住んだ」と述べた。そうした人物の典型が、陸前高田しみんエネルギー(株)総合企画部長の大林孝典氏だろう。
大林氏は、慶應大学在学中の2003年に、歌唱サークルの活動で陸前高田を訪問し、人間味のある当地の土地柄に惹かれて、今でいう「関係人口」となった。07年からは国際協力機構(JICA)職員となり、12年にはタンザニアに赴任、国家予算のない中で僻地農村の住民が自ら村への道路を建設するプロジェクトに関わった。
15年に帰国すると、第二の故郷とまで思う陸前高田の復興に関わるべく、市役所に転職。18年から陸前高田しみんエネルギー(株)の立上げに市担当として携わり、21年にはついに市役所を“卒業”して、自らしみんエネルギーに入社した。公共部門にお金がないタンザニアで学んだ、「地域の人がみんなで支えるべきと思えるものを支える」という仕組みづくりを、まず電気から始めて、様々な分野で実践しようと志している。
被災で人口を大きく減らした陸前高田市だが、それでも毎年10億円が電気代として地域外に流出している。同社では、電力を公共施設や一般市民などに安価に提供する一方で、陸前高田の活性化を願う“思民”に“意思あるお金”を上乗せで払ってもらい、その利益を様々な地域づくり活動に還元するというミッションを持っている。
大林氏の考えたキーワードは「ふるさと納電」だ。住民だけでなく、市外に住みながら陸前高田と関係を持っている全国の人たちにも、具体的な使途を掲げた同社の電力プランを購入してもらうとの発想である。地元の自然エネルギー応援プラン、高齢者見守り促進プランといったものが購入されれば、細り行く財政を補うことができる。発酵まちづくり応援プラン、ワイン造りサポータープラン、ピーカンナッツオーナープランなども構想できるだろう。
電力だけではない。「思いやりと経済の循環」をキーワードにすれば、将来的には観光、福祉、地域交通、地域通貨などを支え合いの中で広げていく、プラットフォーマーとしての事業拡大が展望できる。
しみんエネルギーの主要株主は在京の新電力会社だが、地元建設会社や陸前高田市のほか、前述のワタミオーガニックランドも出資しており、社長はオーガニックランドの小出社長が兼務している。しかも事務所は、(資本関係はないのだが)最初に紹介したCAMOCYの中に入居している。市だけ、在京資本だけ、地元資本だけがそれぞれ単独で動くのではなく、様々に協力・協調をしあいながら、地域の復興に向けて進む、陸前高田独特のつながりあいが、この会社にも象徴されている。

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