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土門「辛」聞

概算金調整で損失飛ばし 米価大幅下落を招いた共計赤字

21年産概算金で最大のハイライトは、9月10日公表の東北5県の概算金スーパー・フライデーだった。口火を切ったのは、前日公表されたJAあおもりの「まっしぐら」と「つがるロマン」。いずれも前年産比3400円の驚愕の下げ幅。県内の農家から「採算が取れない」「来年稲を植えない人がいっぱい出てくるだろう」(以上、同23日付け東奥日報)という悲鳴が起き上がった。
公表からほどなく県内市町村は相次いで農家支援策を打ち出してきた。つがる市は、同17日にまっしぐらやつがるロマンの作付け農家に対し、10a当たり5800円の助成金を交付することにした。地元JAの要請にもとづくものだった。何のことはない、その5800円は農家に対する肥料や農薬などの売掛代金の回収に回るのでJA支援策でもあるのだ。
なぜこのような事態に陥ったか。地元JAの組合長が地元メディアを通して農家に説明するのは、20年産米の販売について「コロナ禍で業務用米の需要落ち込みによるコメの在庫増加」(9月14日付け東奥日報)という責任逃れの理由のみ。JAあおもりが販売戦略に遅れをとったことなど触れていない。
JAあおもりは21年産販売戦略で、コロナ禍の需要減退の中、強気の価格を打ち出したことが失敗の最大原因だった。主力のまっしぐらにとってマーケットでの競合産地銘柄は、関東のB銘柄と呼ぶ業務用米だ。例えば、栃木や茨城産「あさひの夢」。米卸相手の相対取引価格(新米出回り~21年7月)で比較すると、主産地の栃木産より1俵あたり386円も上回っていた。
農水省作成「米のマンスリーレポート」(通称・マンレポ)の21年9月号でも、売れ行き不振を裏付ける数字がある。集荷数量に占める販売数量の低さだ。東北6県の主産品種の中で、まっしぐらはもっとも販売比率が低かった。
致命的なミスは、新米の切り替え時期に価格戦略を間違えたことだ。同7月の相対取引価格は、まっしぐら1万2100円に対し、栃木産あさひの夢は同1万2111円とほぼ同額だが、これに運賃をプラスしたら、まっしぐらはどうみても売り負けするしかなかったのだ。
真っ先に農家支援策を打ち出したつがる市に取材をしてみた。支援策は、米価下落の話題が出た春先に検討を始め、6月市議会に諮って正式決定。JAサイドから、競合産地との価格競争に敗れた結果の大幅な下げという説明は受けていなかった。厳しい財政事情の中、下落に至った原因も調べず、こんな安易に税金で救済していいのだろうか。納税者には疑問が残る支援策だった。

誰がそんなことを言っているのか

全農みやぎも、主力品種のひとめぼれで1万円を割る9500円という屈辱のJA概算金を提示した。前年産に比べて3100円も安かった。何よりも往年のライバル・全農いわてに500円も差を付けられたことは全農みやぎにとって大ショックだった。

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