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農家が受け取る概算金は、さらに低い。県内北部の大規模稲作専業農家Aさんの場合、出荷先の地元JAが伝えてきた生産者概算金は、JA概算金よりさらに500円も安い9000円だった。Aさんは、大幅に概算金が下げられたことに釈然とせず、全農みやぎに電話をかけ説明を求めた。
「JA概算金が、全農いわてより500円も低いのは、全農みやぎの売り方に問題があったということではないでしょうか。つまりは販売の失敗ということだと思います。概算金を大きく下げてきたのは、その赤字を農家に押しつけるためとしか思えません」
核心を突いた質問だったらしく、応対に出た担当者では答えられず、後刻、全農みやぎを代表して阿部茂米穀部長がわざわざ電話をかけてきた。阿部部長は、Aさんが指摘した販売の失敗については認めないばかりか、相手を煙に巻くような説明をしてきた。
「岩手の概算金は手数料を引く前の価格で、宮城は手数料を引いた価格なので、(それを勘案すると)概算金は、岩手と変わらない額だと思いますよ」
Aさんからこの件を引き取り、阿部部長に直撃インタビューすることに成功。まずはAさんとのやりとりの事実確認をした。Aさんの説明通りだった。東北6県の概算金公表ルールは統一されていて、手数料を引く前の価格が公表されると理解していたものの、一応全農いわてに確認してみた。
やはり理解通りだった。JAいわての説明では、概算金を決めるのに、あらかじめ県本部の手数料の分を含めておくが、実際に引くのは、集荷があってしかも実売になった時点でのことになる。これはJAみやぎも同じことである。
その旨取材で指摘すると、阿部部長から想定外の反撃を受けた。逆上気味に「全農いわての誰がそんなことを言っているのか」と問い詰めてきた。もちろん確認した相手の名前は出さなかった。逆にこちらから、次のように説明しておいた。
「全農へ統合以前の経済連時代なら、概算金の公表ルールが、全農いわてと違うこともあったかもしれませんが、全農に統合されてからは、少なくとも東北の県本部は、概算金の公表ルールについて統一しているはずだと思いますよ。それでないと比較ができませんから。もしルールが違うのであれば、公表の際に、全農みやぎは注釈を加えているはずですが、そのような形跡はないように思えます」
それでも地球は回るとばかりに阿部部長は、Aさんへの説明と同じことを繰り返していた。そこで話題を販売戦略の失敗のことに変えてみた。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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