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取材の電話を終えてから、しまったと思った。全農みやぎによる概算金を使って共計赤字を農家に飛ばす弊害の指摘を忘れていたことだ。
農家に赤字補填を転嫁するのに相場実勢も考慮せず概算金を下げることは、米価を人為的に下げ、さらなる共計赤字を膨らませることになる。価格下落をもたらす負のスパイラルが起きてしまう。
【ミニ解説】共計赤字も調整する概算金
■概算金の定義
農水省メールマガジンの「米の概算金と追加払い」に「出荷の際に支払われる仮渡金」という記載がある。これは出荷する方からみた説明。集荷するサイドからみると、仕入れ価格についての概算金ということになる。「追加払い」とは、最終販売価格が確定した段階で、概算金より高かった場合に、その差額分を支払うことである。
■2種類の概算金
全農県本部が各JAに示す「JA概算金」、各JAが農家に示す「生産者概算金」だ。前者は、新米相場の目安として注目され、お盆頃から9月初旬にかけてメディアを賑わす。農家が実際に受け取るのは生産者概算金の方。金額は、先に示されるJA概算金を参考に、いずれも理事会などで決定する。
■県域共計とJA共計
概算金決定の判断材料は、第一義的には相場実勢だが、米穀販売の損益が反映されることはあまり知られていない。全農県本部による米穀販売会計は、県内JAを対象にしていることから「県域共同計算(共計)」と呼ばれている。一方、生産者概算金は、JAが全農を通さず直接販売する分についての損益が反映されることがある。その分は、県域共計と区分けして「JA共同計算(共計)」と呼ぶ。同県内でも各JAによって金額が違ってくるのは、販売態様がJAによって違うためだ。
■生産者がJAを上回るケースも
金額での比較は、生産者概算金がJA概算金を上回るケースが一般的。北海道や関東甲信越がそうだ。逆のケースは東北地方。なぜ下回るか。その理由は定かではないが、商人系業者との競争が激しい産地ほど生産者概算金の方が高くなる傾向がある。
■概算金と仮渡金
概算金は、以前は仮渡金と呼ばれていた。概算金という呼称に統一するようになったのは、2007年からだ。仮渡金と呼ばれた頃は、最終価格の半分程度が支払われていたが年々額が増え、その頃には最終価格の9割程度になっていた。金額面では限りなく買取集荷に近い水準になったので、呼び方を変えたようだ。ただ、その呼び方が定着したとは言いきれない。全農にいがたや県内JAは、いまでも仮渡金という呼び方を使っている。田植え直後の出荷契約時点で支払われるものを仮渡金と呼び、収穫時点で支払われるものを概算金と呼ぶ産地もある。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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