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土門「辛」聞

インボイス制度の消費税額控除 集荷業界再編の引き金にも

この農閑期は、農業現場で農協特例や卸売市場特例のことが、きっと話題になると思う。ことし9月号で取り上げた「税制史上稀な不公平税制“農協特例”の欠陥部分を暴く」のことだ。インボイス制度導入に伴う消費税の仕入れ税額控除(8%)を受けるには、次の3要件を満たさなければない。
(1)農協等(協同組合)や卸売市場
(2)無条件委託方式
(3)共同計算方式
(2)や(3)はクリアできたとしても、何とも厄介なのは要件(1)。「農協等」に関しては、協同組合要件という呼び方が相応しいのに、なぜか農水省は「農協等特例」を正式呼称にした。株式会社など会社法上の組織形態では、税額控除の対象とはならない。国会が、(1)を要件にした以上、この不合理な要件を撤回させるには、それこそ国会での議決が必要。残念ながら、強力な反対意見はなかったし、撤回させる時間的な余裕はもうない。ここは「農協等や卸売市場」という名の「特例ボート」にいかに乗り込むかを考えた方が得策だという結論に落ち着く。
インボイス制度の実施は、23年10月からだ。時間的余裕はない。特例ボートは複数ある。それらの比較や、その乗船方法について紹介してみたい。

業者をミスリードする総務課調整室推奨「簡易課税」

この問題で参考とすべきは、ネットで拾える国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(インボイスQ&A)。そこに特例ボートについて、農協特例のケースが次のように紹介されている。
「農協法に規定する農協や農事組合法人、中小企業等協同組合法に規定する事業協同組合や協同組合連合会(以下これらを併せて「農協等」といいます)の組合員その他の構成員が、農協等に対して、無条件委託方式かつ共同計算方式により販売を委託した、農林水産物の販売(その農林水産物の譲渡を行う者を特定せずに行うものに限ります)は、適格請求書を交付することが困難な取引として、組合員等から購入者に対する適格請求書の交付義務が免除されます」
これを整理すると、組織形態から分類した特例ボートは、農協法上の農協と農事組合法人、中小企業等協同組合法上の事業協同組合、協同組合連合会の4種類がある。インボイスQ&Aには、信用組合や企業組合などについても示されているが、農産物の集荷という事業形態にはなじまないので、ここでは考慮外とした。
このカテゴリーでの特例ボートはすでに存在する。全国主食集荷協同組合連合会(全集連)傘下の集荷組合のことだ。24道県に31組合ある(県集連とも呼ぶ)。紛れもなく事業協同組合の組織形態。商人系集荷業者の救難ボートと期待する向きもあるが、いかんせん船体が小さくエンジン出力も弱いので、税額控除の恩典にありつこうとする業者すべて収容することは、物理的に困難かもしれない。

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