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【土門「辛」聞】
インボイス制度の消費税額控除 集荷業界再編の引き金にも
- 土門剛
- 第206回 2021年11月29日
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(1)農協等(協同組合)や卸売市場
(2)無条件委託方式
(3)共同計算方式
(2)や(3)はクリアできたとしても、何とも厄介なのは要件(1)。「農協等」に関しては、協同組合要件という呼び方が相応しいのに、なぜか農水省は「農協等特例」を正式呼称にした。株式会社など会社法上の組織形態では、税額控除の対象とはならない。国会が、(1)を要件にした以上、この不合理な要件を撤回させるには、それこそ国会での議決が必要。残念ながら、強力な反対意見はなかったし、撤回させる時間的な余裕はもうない。ここは「農協等や卸売市場」という名の「特例ボート」にいかに乗り込むかを考えた方が得策だという結論に落ち着く。
インボイス制度の実施は、23年10月からだ。時間的余裕はない。特例ボートは複数ある。それらの比較や、その乗船方法について紹介してみたい。
この問題で参考とすべきは、ネットで拾える国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(インボイスQ&A)。そこに特例ボートについて、農協特例のケースが次のように紹介されている。
「農協法に規定する農協や農事組合法人、中小企業等協同組合法に規定する事業協同組合や協同組合連合会(以下これらを併せて「農協等」といいます)の組合員その他の構成員が、農協等に対して、無条件委託方式かつ共同計算方式により販売を委託した、農林水産物の販売(その農林水産物の譲渡を行う者を特定せずに行うものに限ります)は、適格請求書を交付することが困難な取引として、組合員等から購入者に対する適格請求書の交付義務が免除されます」
これを整理すると、組織形態から分類した特例ボートは、農協法上の農協と農事組合法人、中小企業等協同組合法上の事業協同組合、協同組合連合会の4種類がある。インボイスQ&Aには、信用組合や企業組合などについても示されているが、農産物の集荷という事業形態にはなじまないので、ここでは考慮外とした。
このカテゴリーでの特例ボートはすでに存在する。全国主食集荷協同組合連合会(全集連)傘下の集荷組合のことだ。24道県に31組合ある(県集連とも呼ぶ)。紛れもなく事業協同組合の組織形態。商人系集荷業者の救難ボートと期待する向きもあるが、いかんせん船体が小さくエンジン出力も弱いので、税額控除の恩典にありつこうとする業者すべて収容することは、物理的に困難かもしれない。
(2)無条件委託方式
(3)共同計算方式
(2)や(3)はクリアできたとしても、何とも厄介なのは要件(1)。「農協等」に関しては、協同組合要件という呼び方が相応しいのに、なぜか農水省は「農協等特例」を正式呼称にした。株式会社など会社法上の組織形態では、税額控除の対象とはならない。国会が、(1)を要件にした以上、この不合理な要件を撤回させるには、それこそ国会での議決が必要。残念ながら、強力な反対意見はなかったし、撤回させる時間的な余裕はもうない。ここは「農協等や卸売市場」という名の「特例ボート」にいかに乗り込むかを考えた方が得策だという結論に落ち着く。
インボイス制度の実施は、23年10月からだ。時間的余裕はない。特例ボートは複数ある。それらの比較や、その乗船方法について紹介してみたい。
業者をミスリードする総務課調整室推奨「簡易課税」
この問題で参考とすべきは、ネットで拾える国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(インボイスQ&A)。そこに特例ボートについて、農協特例のケースが次のように紹介されている。
「農協法に規定する農協や農事組合法人、中小企業等協同組合法に規定する事業協同組合や協同組合連合会(以下これらを併せて「農協等」といいます)の組合員その他の構成員が、農協等に対して、無条件委託方式かつ共同計算方式により販売を委託した、農林水産物の販売(その農林水産物の譲渡を行う者を特定せずに行うものに限ります)は、適格請求書を交付することが困難な取引として、組合員等から購入者に対する適格請求書の交付義務が免除されます」
これを整理すると、組織形態から分類した特例ボートは、農協法上の農協と農事組合法人、中小企業等協同組合法上の事業協同組合、協同組合連合会の4種類がある。インボイスQ&Aには、信用組合や企業組合などについても示されているが、農産物の集荷という事業形態にはなじまないので、ここでは考慮外とした。
このカテゴリーでの特例ボートはすでに存在する。全国主食集荷協同組合連合会(全集連)傘下の集荷組合のことだ。24道県に31組合ある(県集連とも呼ぶ)。紛れもなく事業協同組合の組織形態。商人系集荷業者の救難ボートと期待する向きもあるが、いかんせん船体が小さくエンジン出力も弱いので、税額控除の恩典にありつこうとする業者すべて収容することは、物理的に困難かもしれない。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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