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土門「辛」聞

インボイス制度の消費税額控除 集荷業界再編の引き金にも


【無条件委託方式】出荷した農林水産物について、売値、出荷時期、出荷先等の条件を付けずに、その販売を委託すること。
【共同計算方式】一定の期間における農林水産物の譲渡に係る対価の額をその農林水産物の種類、品質、等級その他の区分ごとに平均した価格をもって算出した金額を基礎として精算すること。
さて先の選択肢でどちらに軍配が上がるか。シミュレーションしてみよう。これでの比較は、特例ボートを自前で仕立てる費用と時間のコストや、乗船して得る税額控除額と、全集連や県集連が仕立てる特例ボートに乗船した場合の手数料との比較となる。
先に全集連と県集連の関係に触れた。両者の関係をもっと分かりやすく理解するには、全農と県経済連か全農県本部の関係を重ね合わせてもらえばよい。JAの役割を果たすのは商人系集荷業者。つまり農家から集荷業者が集めた米は、まず県集連に販売を委託、JAが独自販売するように、県集連で販売する分もあるが、集荷した米の「6、7割は全集連に販売を再委託する」(東北地区の某県集連)状況だ。
全集連の手数料は「1俵(玄米60 kg)で税抜き53円」(鈴木千賀雄常務)。県集連は、地域によってまちまち。東北地区の某県集荷組合によると、「1俵あたり税抜きで100円から200円の間」らしい。東北の主産地なら、米価の平均価格は1万円前後。手数料率に置き換えると1%から2%台になる。デメリットは手数料だけではない。販売価格も下がる。しかも共同計算。それらを考慮すると、自前で特例ボートを建造、つまり事業協同組合への組織転換が有利になることが分かった。
商人系集荷業者の平均的な売上高は、東北主産地の宮城県で約3億円。協同組合へ組織転換で期待できる特例措置による税額控除の分は、表2の通りである。ちなみに特例措置は6年間の期限があり、最初の3年間は消費税の80%が控除され、次の3年間は同50%が控除される。
表2を見るだけでも、年間3億円規模の商人系集荷業者は、組織要件で税額控除の対象となる事業協同組合への組織転換を図った方が圧倒的に有利であることが実証された。実際、事業協同組合の立ち上げの準備に入った主産地の商人系集荷業者A社は、「全集連グループへ出荷することも考えたが、そのコストを考えると、自社で事業協同組合を設立した方が、税理士費用や事務員人件費を考えても、メリットは計り知れないものがあると判断した」と語る。

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