ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

国産アップル・ブランデーを製造・販売 津軽・五所川原市に蒸溜所開業



補助金に頼らぬ投資

夢実現のための大きな障害となっていたのは資金調達だった。しかし、予期せぬかたちで遊休地が資金を生むことになった。畑作用地にと思って10年余り前に大手企業から買い取った工場予定地が太陽光発電業者の目に留まり、長期間発電用に貸し付けることになったのだ。
そこからもたらされる収入が農業経営者としての木村氏の信用を補完し、地元銀行が蒸溜所建設資金の融資にゴーサインを出してくれた。国や県の補助金はゼロだ。もちろん、ズサンな投資が問題となり、新規事業を中止し、解散準備を始めている農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)からの投資も受けていない。
補助事業などに比べて経営の自由度が高く、設備選びや商品設計にもこだわりをいかすことができる。
しかし、民間銀行の金利は高いので、採算確保のためかなりの努力が求められる。木村氏の会社は、安い時には1箱300円程度のこともあるという果汁用りんごと比べて、4~5倍高い1箱1400円で買い取ることを農協に約束した。黒字が出る事業として育てるには、できるだけ無駄なく原酒を作り出す技術も確立しておかねばならない。

減り続けるりんご畑

「あまったりんご畑は無理して高級な生食用を作らなくて、加工専用にしたっていいと思うのですよ」
木村氏は若い時に抱いた夢を実現したいというだけでアップル・ブランデーづくりに挑んでいるわけではない。少子化、高齢化が急速に進んでいるいま、農業の生産規模を維持するためには、できるだけ手間をかけない省力型、粗放型の農法も普及させたい、という思いも原動力になっている。
農林水産省の統計によると、全国のりんご栽培面積(結果樹面積)は2020年3万5800haで、30年前の1990年と比べて28%減っていた。長野県でも32%減で、全国最大の産地である青森県が孤軍奮闘している格好だが、それでも17%減っている(表1参照)。
作業が楽な他の作物に変更したり、畑から山林に戻ったりする場合が多いが、営農を辞めたまま放置された場合は厄介だ。病害虫の発生源になるため、青森県では「市町村と連携し、経営の委託や適正処理(伐採等)を行なうよう指導している」(りんご果樹課)という。高齢化で引退する農家が多いため、「一反5万円で売りに出て、それでも買い手がつかないような畑もある」(木村氏)という。

関連記事

powered by weblio