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青森りんごは1000億事業
青森県のりんごは1000億円ビジネスだ。その市場は世界に広がっている。同県が2021年3月に作成した果樹農業振興計画によると、青森県産りんごは「需要に対して供給不足の傾向」にあるとされ、加工向けの場合も、カットりんご、菓子製造向けなど高付加価値の用途が増えて「安定確保が難しい状況が続いている」という。長野県など他の産地の落ち込みが大きい分、過半の生産シェアを持つ青森県産りんごへの期待は非常に大きい。
一方で、県産りんご販売額の推移(表2)をみると、生食向けの数量や金額に比べて加工向けの落ち込みが非常に大きい。つまり、売り手市場の中で農家はより高値で売れる生食用りんごの栽培にシフトしていたのだ。
しかし、こうしたデータからうかがえるのは、加工用りんごも栽培を続けることができれば販売計画は立てやすい環境にあるということでもある。安い時には1箱300円、平均的にみても600~700円程度くらいの加工用りんごの値段が高くなれば、減り続けていた生産量を増やすことも可能になるかもしれない。
省力栽培の普及がカギ
りんご栽培の省力化に向けて、青森県は改植時に「わい化栽培」への変更を推奨している。
りんごの木が上に高く育ち、枝が横に大きく広がる従来の栽培法と違って、収穫しやすいように低木をたくさん植えて育てていく。単位面積当たり収量は大きく増える。
長野県で先に普及した栽培方法で、青森県も黒石市にある青森県産業技術センター「りんご研究所」の試験圃場などで研究を進めていた。生食用の栽培技術に続けて、今後はモデル農場でのデータに基づいて加工用栽培の省力化指導にも取り組んでいく予定だ。りんご畑はいま、画期的な技術の登場によって、その姿を大きく変えつつあるのだ。
木村氏は「りんごの実は小さくてもいいので摘果を省くなど手間のかからない方法を定着させれば、新規就農者の受け入れも進むのではないか」と考えている。
新規就農者がいきなり高級りんご栽培に参入するのは技術的にも難しい。加工用も一定割合出荷することを想定して年収300万円程度の基礎を固めて、経営が安定したあとに高級なりんご栽培の腕を磨くというやり方もあるだろう。その意味では、加工用りんごをジュースなど従来の用途以上に高い値段で買う余地があるブランデー蒸溜所の登場は、地域の基幹産業であるりんご栽培の活性化に大いに貢献できるはずだ。
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木村慎一 キムラシンイチ
(有)サンアップル醸造ジャパン
社長
1950年、青森県生まれ。4Hクラブの仲間とともに76年、農事組合法人黄金崎農場(現・⑭黄金崎農場)を設立。88年、青森県青年農業士会会長に就任。2001年、青森県農業経営士会会長に就任。05年、黄金崎農場を退社し、⑰サンアップル醸造ジャパンを設立。07年、ウクライナで大豆栽培に携わるも、11年に撤退。12年、ミャンマーとロシア(ウラジオストク)で農業指導に当たる。
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