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特集

茨城県産パン用小麦「ゆめかおり」が紡ぐ物語~情熱が人を動かし、商品が生まれ、消費者に~ 前編

2021年の秋、茨城・栃木・福島のセブン-イレブンの店頭に、茨城県産パン用小麦「ゆめかおり」を使用した4種類のパンが並んだ。タンパク含有率が低く、品質のばらつきが大きいため扱いにくいとされる府県産小麦。その弱点を払拭する取り組みである。前編は生産者の視点、仕掛け人の視点から当事者の声を聞いた。 (取材・まとめ 加藤祐子)

生産者の視点 パンの出来がブレない使いやすい小麦を届けたい

「茨城パン小麦栽培研究会」は茨城県内の18軒で組織する、タンパク含有率13~14%のパン用小麦「ゆめかおり」を提供する生産者集団だ。(有)ソメノグリーンファーム・代表取締役の染野実さん(茨城県坂東市)が、仲間とともに2015年に設立した。21年産のゆめかおりは出荷量720t、作付面積は150haを超え、10a当たりの平均収量は約470kgを誇る。生産量1000tを目指す取り組みについて、会長の高橋大希さんと、出荷組織の「茨城パン小麦販売有限責任事業組合(LLP)」代表の片岡孝介さん((有)ソメノグリーンファーム・取締役)に話を聞いた。

【「ゆめかおり」とは】

ゆめかおりは、09年に長野県で育成された硬質小麦品種です。タンパク含有率が高く、製パン適性に優れており、パンを焼いたときにふんわりとしたボリュームが出やすく、もちもちとした食感が味わえるのが特徴です。茨城県では10年にパン用小麦として初めて認定品種に採用されました。
生産者がこの品種を導入するメリットは3つあります。まず、縞萎縮病・赤さび病、うどんこ病、赤かび病に抵抗性を持っていること。茨城県県西地域では昔から麦類の生産が盛んですが、病害によりこれまで作ってきた品種を作付けできない圃場が増えてきました。基本的な防除等を行なえば安定した収量が見込めるので、大麦からの切り替え、県内産小麦の多くを占める「さとのそら」からの切り替えにも適しています。次に、黒ボク土の畑は小麦のタンパク含有率を確保しやすい土壌条件であること。県西に広がる畑の多くは黒ボク土なので、高品質の小麦を栽培しやすいということになります。3つ目は、交付金の額がパン用品種だと割増しになること。標準品種である「さとのそら」と比較して2300円/60kgが上乗せされます。(高橋)

【栽培研究会設立までの経緯】

始まりは13年産で(有)ソメノグリーンファーム(茨城県坂東市)が45aで取り組んだ試験栽培です。染野実社長(茨城パン小麦栽培研究会・副会長)が「茨城県の認定品種になったものの醤油に回されている品種を本来のパン用で生産できないか」と、坂東普及センターのセンター長に赴任した農業大学校時代の恩師に声をかけられたのがきっかけでした。1年目(13年産)はお付き合い程度で始めたものの、収穫してみると10a当たりの収量は551kg、タンパク含有率は12.5%と手応えを感じたそうです。試しに全粒粉にしてパンを焼いてみたら美味しかったとか。

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