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特集

茨城県産パン用小麦「ゆめかおり」が紡ぐ物語~情熱が人を動かし、商品が生まれ、消費者に~ 前編



【最初の挑戦と挫折】

もともと約13年前に国産小麦でセブン-イレブンのパンを作れたらいいなという思いはありました。きっかけはいろいろありますが、まず私は農学部出身なので、日本の農業を守りたいという思いを抱いていました。小麦の輸入量が多いことは小学校で習ったので知っていましたが、25歳くらいの頃にものすごく美味しいと思ったうどんは、オーストラリア産のASWを使った黄金のうどんでした。
サラリーマン時代を経て、結婚後に「うまい棒」を作っているリスカ(株)という製菓会社の関連会社の(株)リバティーフーズでパンを製造する仕事に携わるようになりました。茨城県と福島県にある工場で焼いたパンを茨城・栃木・福島3県のセブン-イレブンに販売しています。パンの原料小麦が全量輸入品だということは、この仕事を始めてから知りました。
小麦を手がける最初のきっかけは、13年前のある日、パン用小麦を茨城で作っている70歳くらいのおじいさんが会社に突然電話をかけてきたことです。「『ユメシホウ』という品種の小麦があって、パンを作れるよ」と教えてくれました。早速、農研機構の作物研究所に話を聞きに行くと、ぜひパンを作ってほしいと背中を押されました。
私は物事を単純に考えるので、取引先の製粉会社である昭和産業(株)に相談すると、小麦粉を作るには小麦が最低50tは必要とのこと。そこで、翌年の播種用とパンの試験用の小麦粉にする分の小麦を作ろうと、最初に訪ねてきた農家にお金を払ってユメシホウの作付けを依頼しました。農業関係者にアポが取れれば、訪ねては「来年作ろうよ」と口説いていましたが、今思えばあまりに幼稚で、「うん」と言われていたら大変でした(笑)。
ところが、収穫を前に育てていた小麦は、法律で翌年の播種用には使えないことが判明……。小麦の試験栽培をやるかやらないかを迷い、やると決めてから約1年間(作物としては約半年)、月に数回は畑に通いました。そこまでやると思い入れも意識も“ただ聞いた話”ではなくなります。農業や補助金の複雑な仕組みを知り、コメ以外の作物が補助金頼みで作られてきた実態を知りました。「自分事として捉えてやるだけやったけれど、パン用小麦を作るのは大変で、関東ではセブン-イレブンのパンにするというのはまず無理な話、もう小麦には手を出しません」という結論に至りました。

【パン用小麦生産の難しさを乗り越えた人たちとの出会い】

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