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その後、茨城県の出先機関から「パン用小麦がある」という情報が届きましたが、事情を話すと先方から提案を取り下げてきました。実はそれが後にタッグを組む染野実さんたちの「ゆめかおり」だったのですが、その時点で取り組んでいたらたぶん形にならなかったでしょう。
2017年6月に開催された新麦コレクションというイベントで、(有)ソメノグリーンファームを訪問し、これが劇的な出会いになりました。私が難しいと感じた困難を乗り越えて形にしている人が、染野さんでした。私も以前より経験を積んだので、今回は茨城県産小麦をセブン-イレブンのパンにできると確信して、再挑戦することを決断し、口に出すようになりました。同時に、染野さんら茨城パン小麦栽培研究会の掲げる目標「ゆめかおりの生産量1000t」への応援がスタートしました。
とはいっても、セブン-イレブン側は、小麦のことをあまりよく知りません。小麦は収穫前に翌年の作付計画とその計画に基づいた製粉会社と播種前契約をしなければなりません。小麦粉を調達している昭和産業に相談し、ゆめかおりのサンプルを持ち込みました。タンパク含有率13~14%の小麦は製パン適性に優れるという評価でしたが、昭和産業の現場は賛成ばかりではなかったようです。
まだ具体的に商品開発が動き出していないので、私としても昭和産業にすべてのリスクを背負わせるわけにはいきません。そこで、茨城県内の給食の実態を調べてみると、製粉会社は同じ昭和産業が担っていて、輸入品の1CW(北米産)に国産の麺用小麦を1~2割ブレンドして、製パン適性は落ちるけれど“お茶を濁すような”小麦粉を作っていることがわかりました。ここにゆめかおりを当て込めば、輸入小麦の購入量が減るだけで誰にも迷惑がかからない。リスクをカバーする提案を盛り込んで協力を約束してもらって最小単位の50tが最初の目標になりました。
【定番商品の原料を地元産小麦に置き換えたい】
一方で、私は15年くらい前から、セブン-イレブンの北関東エリアの商品開発の担当者とタッグを組み、地元の農産物を使ったパンを生み出しています。最初のターゲットは栃木県のイチゴ「とちおとめ」でした。当時、栃木県は40年ほどイチゴの生産量が日本一だったので、モノになりそうだと判断しました。早々にセブン-イレブンとも合意して商品化を進めましたが、イチゴをジャムにするところからだいぶ苦労しました。商品化が成功するかどうかは、最終的にはそのときに北関東エリアを担当する商品開発の責任者が、取り組む意義を見出せるかどうか、どうしても商品化したいという思いを抱けるかだと思います。国産小麦を原料に使うのは良いことで大賛成と、本社のプレゼンでぶち上げてきたと意気込んでいた人が、商品提案の段階で「革新的な商品を出したい」と言い出したり……。1年半~2年にわたって平行線をたどりました。
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