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その間にゆめかおりは収穫期を迎え、初めて播種前契約をして購入した19年産小麦は、1年以上小麦のまま貯留し、小麦粉に挽いた分も大部分は余らせてしまい、ほかに転用してもらいました。「セブン-イレブンで使う」と約束していたので、昭和産業の内部で私を応援してくれた人たちは大変だったと思います。
翌20年になって新商品企画が通り、ようやく3品の“新商品”でのテスト販売にこぎつけました。でも、私の希望する商品はそこにはありませんでした。当初から私は定番商品で粉を置き換えることに価値があると言い続けました。その理由は、「地元産の小麦を使ったパン」をきっかけに通常より購入が増えれば売り上げが向上するのと、製造側で小麦粉を2~3カ月で使い切る計算が立つことでした。過去のデータを示しても、「定番商品に使っても、今ある売り上げが変わらず意味がない」とか「新商品ならプラスの売り上げになる」という理由で実現できませんでした。代わりに部下が会議に出るとダメ出しを食らうなど、開発のメンバーたちの間にも疲弊感が漂い、モチベーションが下がったときは大変でした。残念ながら、テスト販売から本販売にはつながりませんでした。
翌3年目、風向きが変わりました。7月末からの茨城県内でのテスト販売(3週間)を経て、茨城・栃木・福島にエリアを拡大し、小麦を使いきるまでの約2カ月間の本販売が実現したのです。セブン-イレブンの北関東エリアの商品開発の部署に過去に一緒に仕事をしたことがある担当者が着任し、話を進めてくれたたためでした。
小麦は出荷したものの具体的な話が進まない間、小麦の生産者の皆さんは不安に思って待っていてくれたと思います。Facebookでもつながっているので、日々の行動を発信するようにしました。栽培研究会を担当していた普及指導員の油谷百合子さん(当時は坂東普及センターに在籍)は配慮の人で、生産者の間に入って栽培指導以外にも、製粉会社とのやり取りや私のような需要家の間にも入って奔走してくれました。好奇心を持ってすぐに行動し、もともと農家のなかでも意識も目線も高くて、こうありたいというビジョンを持った栽培研究会の面々に、より具体的なターゲットを定める役割を果たしてくれました。
【セブン-イレブンの棚にゆめかおりパンが並ぶ意味】
パン屋さん界隈では、セブン-イレブンの店舗の棚に府県のパン用小麦を使ったパンが並ぶというのは、それだけでかなりインパクトがあります。パン・製粉業界や農家の関係者からは高い評価をいただきますが、コンビニエンスストアのお客さんが「ゆめかおり!」と騒いでいるわけではありません。「ゆめかおりって何だろう?」と思う意識の高いお客さんはごく稀でしょう。また、パン屋の店員さんなら売っているパンに誇りがあって「オススメです!」となりますが、コンビニエンスストアの店舗ではさまざまな商品を扱っているのでお店の人がそこまで意識高くパンを売ってくれるわけではありません。
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