ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

ニッポンの農業をかっこよく!牛飼いの次男坊の挑戦

グループ全体の年商約345億円、従業員数約1400名。60ほどの農場を持ち、約1万8000頭もの牛を飼育している。関連会社は21社。この数字は、鹿児島県を拠点に畜産を手掛けるカミチクグループのものである(2021年実績)。事業をここまで大きくしたのが、代表の上村昌志だ。畜産業界が抱える課題と正面から向き合い、革命を起こそうと走り続けている。 文・写真/新森雄大、写真提供/(株)カミチクホールディングス

畜産の6次産業化

「全部やる、生産も加工も販売も」
それがカミチクグループの特徴だ。いわゆる「6次産業化」であるが、この考え方自体はそう珍しいものではない。規模の大きくない農家でも、加工品販売・直売所・農家レストラン・農業体験などを手掛けているところはけっこうある。だが、カミチクグループは、そんな6次産業化の一般的なイメージとはどこか違う感じがする。
グループは(株)カミチクを中核とし、同社は食肉加工・卸売・商品企画などを手掛ける。生産部門は(株)カミチクファームなどが担当し、繁殖から肥育までの全てをこなす。さらには飼料も自給する。肉牛のほかに養豚を行なう会社もグループ内にある。また、「好価格」という考え方も大事にしている。生産者も販売者も消費者も、みんながうれしい価格というものだ。
カミチクのブランド牛肉には、A4以上の高級和牛である「薩摩牛」「薩摩牛 極」、オーストラリア産Wagyuを鹿児島で肥育した「南国黒牛」、飼料用米を多く与えて育てた交雑種の「玄米黒牛」などがある。最高級品も、手頃な価格のものも取りそろえている。
販売は量販店や飲食店へ卸すだけではない。カミチクの肉を広く食べてもらえるような提案も仕掛ける。関連会社で焼肉店を運営し、関東や関西を中心に展開。「うしのくら」「うしかい」「ビーファーズ」「BeBu-Ya」「かみむら牧場」などを擁し、海外にも店舗展開が始まっている。
かみむら牧場はワタミ(株)との合弁会社であるワタミカミチク(株)が運営する焼肉食べ放題の店だ。こちらは2020年6月に1号店がオープンし、感染症対策を徹底した店舗システム(非接触接客や換気など)でも話題になっている。カミチクファームが育てた肉をたっぷり食べられるとあって、人気も上々だという。現在進行形で店舗数を伸ばしている。
ほかにも、香港やベトナムなどに海外法人を構え、世界に向けて和牛の魅力を伝えている。
冒頭に掲げた疑問に戻る。カミチクの6次産業化は、ほかと何が違うのか? 事業内容からその回答を見出すなら、スケールの大きさや挑戦的な取り組み、といったところだろうか。だが、それだけではない感じがするのだった。

根っこにあるのは、牛飼いの誇り

「毎晩ね、父が焼酎を飲みながら言うんです。農業は生命の源をつくる素晴らしい仕事だ、と」

関連記事

powered by weblio