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特集

茨城県産パン用小麦「ゆめかおり」が紡ぐ物語~情熱が人を動かし、商品が生まれ、消費者に~ 後編

2021年の秋、茨城・栃木・福島のセブン-イレブンの店頭に、茨城県産パン用小麦「ゆめかおり」を使用した4種類のパンが並んだ。タンパク含有率が低く、品質のばらつきが大きいため扱いにくいとされる府県産小麦。その弱点を払拭する取り組みである。後編は商品企画の視点、製粉会社の視点、普及指導員の視点から当事者の声を聞いた。 (取材・まとめ 加藤祐子)

商品企画の視点 国産原材料を使った地域商品で地域の活性化に貢献したい

(株)セブン-イレブン・ジャパン
商品本部 地区MD統括部
東北・北関東地区
チーフマーチャンダイザー
五十畑 浩志さん

茨城パン小麦栽培研究会の小麦を使った焼きたてパン。すでに一定の評価を得ている外国産小麦から茨城県産「ゆめかおり」に変更し、その魅力を茨城・栃木・福島のお客様にどうやってアピールするのか。セブン-イレブンの東北・北関東地区の商品開発の担当者に話を聞いた。


――“ゆめかおりパン”の取り組みの内容と手応えは?
2020年の10月に茨城県産ゆめかおりを使用した商品3品を茨城県内の約150店で、約3週間販売したのが最初の取り組みです。そして、翌21年に定番商品4品の小麦を茨城県産ゆめかおりに置き換えて、茨城県の約70店で約3週間(7月26日~)販売し、同じ4品を茨城、栃木、福島の約1500店にさらに広げて8週間(9月27日~)販売しました。
一番のこだわりは、茨城県産小麦の良さをどう伝えるかでした。すでに焼きたてパンには外国産小麦(外麦)を使っていて、お客様から一定の評価をいただいてきました。そのため、新商品では、小麦そのものの違いを伝えることが難しかったですね。毎週、新商品が沢山発表されるため、その一つという認識だったお客様もいらっしゃったかもしれません。定番商品の小麦を置き換えるほうが茨城県産ゆめかおりを広く認知いただけるのではないかということで、翌年は定番商品に狙いを定めました。お客様には国産原材料を使っているかどうかというより、「ゆめかおりを使ったパンって美味しい」と言っていただけることがゴールで、我われの責任です。
――北海道産小麦の知名度が高いなかで、茨城県でとれた麦を、茨城県で挽いて、茨城県とその近県で販売する意味は?
そこが今回の取り組みのなかで一つの肝です。これまで北海道産以外ではパン用小麦として我われが求めるものに出会えていなかったので、パンに加工して美味しい小麦をやっと見つけられたというのが本音です。生産量が少なくても、地域限定の取り組みであれば、エリアと期間を絞る形で試験的に取り組むことができます。地域限定の商品は店舗側にとっても、自分たちにしか販売できないので売りたい商品になります。
――商品化で苦労したのは?
通常に比べて商品として発売するまでに半年以上かかりました。まずはパンとしての美味しさをどう引き出すのかの部分が難しく、ゆめかおりはこれまで使ってきた外麦に比べて粘りが強く、パンに加工したときに重く(硬く)仕上がりやすいという特徴がありました。定番商品の場合、原料にゆめかおりを使ったら違うものになってしまったという形で、これまで購入いただいていたお客様の信頼を裏切ることはできません。食感などの品質を同等にするために、生地の配合や焼成条件などの検討に非常に時間を費やしました。

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